家電口論

2020年12月5日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

スマート家電グランプリ審査員。主催する『生活家電.com』を通じ、家電の新製品情報、使いこなし情報他を発信中。過去、某メーカーでAVメディアの商品企画を担当、オーディオ、光ディスクにも精通。また米・食味鑑定士の資格を有する。水、米、パン、珈琲、お茶の味に厳しい。

 テレビ。10年前の2010年、完全地デジ化になる前年は、液晶テレビの値が下がったこともあり、どのメーカーのテレビも爆発的に売れました。この時の主役は、シャープ、ソニー、東芝、パナソニックなどの日本メーカーでした。

 しかし、オリンピックがあるはずだった2020年。もはやテレビで気を吐く日本メーカーはいません。逆に東芝のテレビ事業部を傘下にした中国ハイセンスなどが、新興勢力として日本市場でも目立ち始めました。また、液晶ディスプレイの技術を絶やさないようにと作られたJDIは、新しい技術を発表しているにも関わらず反応が薄く、厳しい状況に置かれています。

 そんな中、2019年からテレビ事業に参入したアイリスオーヤマが、今までになかった考え方でテレビを引っ張り始めました。そして2020年の予想もしない方向性、コンセプトの基に、第二世代モデルを世に出しました。

 もし、こんな考え方で作られたテレビがあれば、今も日本メーカーはテレビ分野で生き残れた、いや君臨していたかもしれない。そんな可能性が感じられます。今回、テレビのコンセプトと商品のあり方をレポートします。

アイリスオーヤマ「LUCA(ルカ)」

テレビのコンセプトは、安価なエンターティメント

 テレビは、テレビ局から発信される映像情報受信機です。それは常にエンターテイメントを高めることを中心に技術開発してきました。

 テレビが発売された後、一番最初の技術革新は「カラー化」。白黒がカラー化されると、見やすくもなったのですが、むしろ放送されているものが、そのまま見られると言う「リアリティ」が高まったとも言えます。

 次の技術は「大型化」です。大型のブラン菅を作られるようになった時、全メーカーは大型テレビを売りに出しました。28〜32インチ。これも「臨場感」だと言えます。

 そして「平面化」です。ブラウン管から液晶テレビに変わりました。テレビが、家電というよりインテリアになりました。また、自家発光型のテレビとしてプラズマテレビがありました。パイオニア、パナソニックが頑張ったプラズマは、実に画質がよかったです。自家発光型の強みは、色の基本の一つ「黒」が綺麗に出せること。「シラっちゃけた黒」のしまらない画質とは一線を画します。しかし、ユーザーが支持したのは液晶テレビでした。理由は、電気代です。そうテレビは「安価な」エンターテイメントであり、逆に言うと、それ以上でないわけです。

 その後、地デジ化。「デジタル化」です。いろいろな言い方がありますが、デジタル化の本質は「安価化」「均質化」です。例えば、アナログ技術で高品質化するには、高い精度が必要です。基本、信号を復元できませんから、信号を少しでもロスしない様にする必要があるからです。ところがデジタルは信号ロスを想定した技術です。ロスしても復元できます。これが安いテレビでも、キレイに映る理由です。

 そして「均質化」。どこで作っても同じ品質と言うことです。

 その時、その時、いろいろな技術を押しはめていますが、商品コンセプトは一貫しています。それは、「安価な」「エンターティメント」家電であることです。お題目のように唱えられている、4K、8Kなどの高画質は「技術」であり、コンセプトはテレビができて以来同じなのです。

目が悪いから「大画面」

 社会人になってしばらくして、実家に帰った時、新しい32インチのテレビが置いてありました。母親はちょっと自慢げでした。職業柄どんな感じか聞いてみると、「字が大きくなんで、見やすい」との答え。時代劇「暴れん坊将軍」などが大好きななので、「健さんが大きく映るのがいい」とかの答えを期待していた私はちょっとビックリしました。

 「年取ると目が悪くなるから、大きいほうがいい」

 当時、大型はまだ値が張る商品(ブラウン管ですから、1インチ=1万円の時代)でしたが、さっさと買い替えたのは、臨場感でも何でもなく、「見やすかった」ためです。

 「なるほど」と思ったわけです。「大画面」という仕様を「エンターテイメント」ではなく「やさしい」として使ったわけです。

アイリスオーヤマの「LUCA(ルカ)」 一世代目は、組み合わせ

 アイリスオーヤマの家電は、必ず新しい提案がのっかっています。ただし、アイリスオーヤマは、大手家電メーカーのように、基礎技術から詰めてなんてことはありません。もしそれを行うとすると、本格開発しないといけないので、値が高くなりますし、人も集めなければなりません。

 確かに、アイリスオーヤマは、家電メーカーの退職者を採用していますが、それはあくまで経験者だからです。一から開発するつもりはありません。しかし、新しい提案はしたい。このような時に使われる手は、2つあります。

 今までなかった組み合わせの提案。そしてコンセプトの変更です。

 アイリスオーヤマのテレビが、本参入したのは2019年。目玉は「高画質」ではありませんでした。ちょうど、中国ハイセンスが本格販売を始めた時期にあたります。こちらは「東芝」のチップをいれ、チューナー3台を入れた、高技術、低価格という、デジタル技術の申し子みたいなテレビです。これに、日本のテレビメーカーはことごとく破れたわけです。同じ土俵で挑んでも、AV系のブランド力がないアイリスオーヤマの勝ち目は皆無。

 彼らが選んだのは「音声操作」との組み合わせでした。

 テレビと言えばリモコンですが、今の世の中、ほとんどの家電はリモコン操作。使わないリモコンを含めると家に数十個はあると思います。しかも、どれも昔ながらの「乾電池」で動作するタイプ。電池切れたら大変。昔のゲームボーイのために、電池をずらりと揃えていた時代とは違い、充電が当たり前の時代ですから、家にストックはほとんどないですからね。確かにリモコンは便利なのですが、だんだん、あり方が時代からはずれ始めていることは事実です。

 じゃ、スマホのアプリを使ってと、考えるかもしれませんが、アプリを開いてようやく使えるわけですから、面倒です。CMの間、別の番組のような芸当には不向きです。

 で、アイリスオーヤマが選択したのが「音声操作」です。東京で、「1チャン」というと、「総合テレビ」にチャンネルが変わります。音声の大小も可能。結構、便利です。技術の組み合わせ提案が第一弾だったのです。

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