二世代目はコンセプト変え
では、第二世代はどうしたか?コンセプト変えです。
「テレビは、4K、8Kという高画質を追い求めているんじゃないの?」と思った人も多いと思います。が、それは技術です。コンセプトは、「エンターティメント」です。
他にコンセプトはあるのか? そう、アイリスオーヤマは、「人にやさしい」テレビに舵を切ったのです。
超高齢者社会に寄り添うテレビ
超高齢化社会の問題は幾つかあります。その中の一つは、体の衰えです。体力、筋力の衰えもありますが、五感の衰えもあります。特に問題は「目」です。それは老眼ではありません。最大の問題は「白内障」です。
「白内障」は水晶体が濁り、見えにくくなる病気です。濁るのは、水晶体の細胞内に存在するクリスタリンタンパクというタンパク質の異常変質が原因です。クリスタリンタンパクは、本来であれば非常に小さく、水晶体の働きを邪魔することはありませんが、クリスタリンタンパクを構成しているアミノ酸が、様々な要因によりストレスを受けることで、異常なサイズの塊へと成長してしまうのです。これにより、水晶体を通過するべき光が眼の奥に届かなくなったり、光を反射しまいます。
問題は、加齢による発症率です。あるデーターでは、50歳代で40~50%、60歳代で65~80%、70歳代で85~95%、80歳以上では、100%。程度によりますが、加齢性の白内障は、自覚症状が無い場合が多いです。見えにくくなるのは、老眼だけではないのです。
このためにアイリスオーヤマは「はっきりボタン」を新設しました。
輝度を上げ、色彩度も上がった画像を出します。裸眼だと、ちょっとギラつく感じになりますが、目の前に、白濁したフィルターを置くと、なるほどそれなりに見えやすい。そう、新しい機能は、人にやさしい機能だったのです。
「開発」とは異なる
では、大手メーカーのテレビではどうでしょうか? 技術的にできるのかと問われたらできると言えます。画像調整機能は、今のテレビは基本持っています。しかし、多分、推奨しないでしょうね。大きな理由は、彼らが「原画再生」を何より重視するからです。
それを正確にするために、放送局、映画会社と組んで、研究、技術開発を進めているわけです。根本は、どれだけ正確に、元の画を再現できるのかです。ここは、日本メーカーの十八番であり、未だに画像エンジンの最高は日本メーカー製です。
しかし精度を上げれば上げる程、見た目の差はほとんどないのに、莫大な開発費を必要とします。要するに行きすぎた技術は、コストパフォーマンスが悪い技術となのです。
このような技術が必要な世界もあります。ドキュメンター映像は典型例ですね。ネーチャー、美術、歴史を問わず、ありのままを記録しなければならないコンテンツは不可欠です。
そして日本メーカーは、それを追求し続けたわけです。そして、商品の考え方も、それを脱していないのです。オリジナルと違う画質が一発で出るボタンなど認められないとなります。
しかしテレビは、安価なエンターティメント。この時必要なのは、リラックスです。見えやすい、わかりやすいとリラックスを促します。黒が白に見えるのは困りますが、ちょっとした色味の差より、コンテンツにのめる込めることの方が重要です。
「正確」だけが商品ではない
仏教の言葉で「嘘も方便」と言う言葉があります。これはある人に説いた内容と、別の人に説いた内容が違うために発生した言葉です。その人がいる境地で感じることが異なるため、意図的にある部分を曲げて説法したことが由来です。
商品は正しさを競うところもありますが、あるのは人の世を豊かにするためだと思います。そのためには、オリジナルと異なるが……という選択はありふだと思います。
逆に、今のテレビは正確さばかりに囚われ、人へのやさしさ、使い勝手を見失っている商品が多くあるようにも思います。日本メーカーのテレビ事業が失敗したのは、技術、ビジネスを追うあまり「人への豊さ」を失ったためかも知れません。
日本の高齢化社会を支えるのは、このような「やさしさ」を持った家電も必要なのではないでしょうか? また、これ位柔軟な考えで挑まないと、技術、コストで猛追する海外勢と価格競争できないのではないでしょうか?
今後、大手メーカーの、やさしい家電を期待したいです。
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