失敗した米国のグリーン成長戦略
米国では、昨年の夏から太陽電池メーカーの破たんが相次いだ。連邦政府が5億ドル以上の資金を投入しオバマ大統領のペットプロジェクトと言われたソリンドラ社も破たんした。中国メーカーとの競争に敗れたためだ。中国製太陽電池を不当廉売で訴えた米国メーカーの主張が通り、今年2月の船積み分から31%~250%の関税が中国製電池に課せられるようになった。
しかし、米国メーカーの破たんは続いている。7月2日には連邦政府が資金を投入していたアバウンドソーラー社が連邦破産法に基づく会社清算を申請した。オバマ大統領も、クリーンエネルギーによる雇用創出については演説でも触れなくなった。最近は輸出振興による雇用創出と言っている。
連邦政府が資金提供を行った太陽電池メーカーは破たんし、また米国政府が補助金を投入した風力発電事業での設備の多くは中国、インドメーカーが受注し、米国での産業振興と雇用創出には結びつかなかった。競争力のある中国製の輸入を防ぐためには課税を行うしかなかった。新興国でも製造可能な技術レベルの製品で競争することは無理ということだ。
中国の産業と雇用を創り出した
ドイツの固定価格買い取り制度
オバマ大統領が成功例として挙げたスペイン、ドイツも今は再エネの導入政策で苦しんでいる。欧州主要国は再エネによる固定価格買い取り制度 (FIT) を早くから導入したが、買い取り価格が設備導入者にとって有利であったために新規事業として始める企業が続出し、設備の大半を家庭ではなく事業用が占める事態になった。設備導入量が急増し、電力消費者の負担も大きく増えることになったために、数年前から欧州各国は買い取り価格を引き下げ始めた。また、買い取り量に制限をつけ、全量買い取りを中断する国も出てきた。
ドイツも数度の価格引き下げを行い、太陽光発電の買い取り価格は日本の半分以下になっている。今年の4月1日から適用されている価格は家庭用の小規模設備用で1kWh当たり19.5ユーロセント、1万kWまでの事業用では13.5セントから18.5セントだ。1万kWを超える設備からの買い取りはなくなった。また設備導入量が5200万kWに達した時点でFIT廃止が決定した。
欧州各国がFITを導入した目的の一つは、産業振興と雇用創出にあったが、その目的が果たせなかったのもドイツがFITの廃止を決めた理由だ。ドイツでも中国メーカーとの競争に敗れた太陽電池メーカーの破たんが相次いだ。「中国の前でハエのようの死んでいく太陽光メーカー」と報道されるほどだ。FITによる設備導入は、中国メーカーの増産につながり、ドイツメーカー支援には結びつかなかった。米国と同じく、中国メーカーに対する不当廉売の訴えが欧州委員会に対し先月行われる事態になっている。