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しかも、付加価値創造額に占める製造業の比率がドイツと日本は高い。日本の付加価値創造額に占める製造業の比率は20%弱だが、製造業のエネルギー消費比率は40%を超えている。英国の製造業がGDPに占める比率は日本のほぼ半分だ。その分日本より多いのは金融・不動産の分野だ。それでも、日本よりエネルギー効率が悪い。日本は節エネが徹底された社会になっている。図表‐2が示す通りだ。
産業構造を維持し、節エネによりエネルギー効率を向上させながら、さらに経済成長を実現するのは至難の業だ。ほぼ不可能だ。
産業構図の転換で給与が下がる
節エネを行いながら経済成長を図るには、製造業からサービス業中心の非製造業に産業構造を転換するしかない。しかし、この場合にはGDPは成長ではなく、減少するだろう。我々の生活も苦しくなる。
国税庁の資料によると、2010年に1年を通して働いた日本人の平均給与は412万円だった。1997年の467万円をピークに減少を続けている。業種別では製造業459万円に対し、金融・保険業589万円、情報通信業564万円、建設業441万円、運輸・郵便業406万円、医療・福祉業389万円、不動産・物品賃貸業387万円、卸売・小売業362万円、宿泊・飲食サービス業247万円だ。
給与に差があるのは、基本的に一人が創り出す付加価値額が異なるからだ。例えば、製造業は1098万人(源泉徴取対象者)が93兆円の付加価値額を創り出すのに対し、卸売・小売業、運輸業、宿泊・飲食サービス業の1628万人が創り出す付加価値額は114兆円だ。
製造業から産業構造の転換を図る場合に、付加価値額が高い金融・保険、情報通信などの分野が吸収可能な雇用は多くなく、高齢化が進む日本では、医療・福祉、宿泊・飲食業などで吸収されると思われる。結果、付加価値額、即ちGDPは減少する。我々の給与も減少する。エネルギーを使用しない形に産業構造を転換するとGDPも給与も減少するということだ。エネルギー消費が少ない非製造業の新規産業はあるのだろうか。
さらに、エネルギー効率のよい日本から生産が海外に移転することにより、温室効果ガスの排出量が増加し、温暖化への悪影響が増す問題もある。温暖化防止に取り組むのは日本の義務だ。
大きな再エネ導入で消費者の負担増
選択肢では、どのケースでも太陽光、風力を中心に再エネが大きく増加し、2030年の電力供給で25%から35%を占めることが想定されている。30%のシェアの場合には、太陽光発電で666億kWh、風力発電で663億kWhの電力供給が行われることになる。設備量に換算すると、それぞれ約6000万kWと3000万kWを超え、合わせると約1億kWになる。この設備を2030年に向け建設するためには、平均毎年500万kWを超える設備導入が必要だ。