World Energy Watch

2012年8月22日

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 再エネの導入を促進するために、7月からFITによる再エネからの発電の買い取り制度が導入された。導入を促進するため当初3年間は、事業者にとり有利な買い取り価格が適用されることが決まっている。例えば太陽光発電の買い取り価格は1kWh当たり42円。家庭用電力料金のほぼ2倍だ。その買い取り価格でも今年度の設備導入量予想は250万kWだ。

(図表-3)日本の太陽光発電のコスト予想
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 毎年500万kWの設備を導入するためには、買い取り価格をいくらにすれば良いのだろうか。太陽光設備を導入するのに有利な場所の多くは、既に孫正義氏などにより押さえられているだろう。設置が進むにつれ、送電線の敷設、用地買収費用などが増加することが予想される。

 今後太陽電池の価格下落があるとしても、その下落分は付随費用の上昇分に追いつかず総費用は増加する可能性が高い。図表‐3の通りだ。設備導入のコスト増をカバーするためにも、買い取り価格を上げる必要があるだろう。その費用は消費者に転嫁される。消費者は少なくとも20年間に亘り買い取り費用の負担を強いられることになる。電力料金はどこまで上がるのだろうか。

実現可能な政策を提示せよ

 福島の事故以降に再度脱原発に踏み切ったドイツのメルケル首相は、昨年6月「未来の電力への転換を成功裏に導く世界最初の工業国にドイツはなれる」宣言した。再エネによる発電を現在の20%から2020年には35%に、2050年には80%にする一方、2020年に10%の節エネを目標とした。

 今年7月になり、この目標の実現性について、アルトマイヤー環境大臣、レスラー経済・技術大臣から相次いで疑問が呈された。優先課題は「電力料金、競争力、雇用」であると両大臣はしている。レスラー大臣は、目標の見直しにも言及している。

 ドイツでは北部に洋上風力の導入が予定されているが、電力需要地の南部への送電線の建設が進んでいない。住民の反対と資金手当ての問題からだ。4500kmの敷設予定がまだ200kmしか完了していない。資金も10年間で最低15兆円は必要と言われているが、調達の目途は立っていない。脱原発後の電力供給をどうするか具体策が見えない。野党社会民主党は「連立政権のエネルギー革命は口先だけだ。送電線の拡張は何ら進捗していない。再エネ導入は失敗だ」と政府を非難している。メルケル首相は現実的な解決策を示す必要があるだろう。

 日本の選択肢はドイツ以上に問題が大きい。産業、国民生活への影響について十分な説明はなく、達成への道筋も示されないままだ。現実的に達成が不可能な選択肢を示されても、判断を行う方法はない。原発が好きか嫌いかでエネルギー問題を判断しろというのだろうか。それとも、どうせ国民は原発の是非くらいにしか関心がなく、経済への影響や達成への道筋を示さなくてもごまかせるほど馬鹿だと政府は思っているのだろうか。

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