他方、中国の圧倒的かつ今も拡大する経済力の前では、こうした当然の指摘も具体的に改善できないのが実情です。そうであるならば、本来Glazerが指摘すべき問題は、中国の経済外交が強圧的であるか否かではなく、中国の強圧的経済外交と如何に対峙するかに関する具体的方策であるべきだったと言えましょう。
もちろん、この問いに対する完全な解答はありませんが、日本が尖閣問題で学び、フィリピンがスカボロー岩礁問題で実行できなかったことは、対中経済問題の「多国間化」です。中国が尖閣問題でレアアースを持ち出したことは外交的に大失敗でした。問題を多国間化・国際化して、中国が孤立したからです。
その教訓を学んだ中国は今回、フィリピン農産物に対象を絞り、問題を二国間関係に限定することに成功しました。案の定、フィリピン財界は中国の圧力にいとも簡単に屈し、フィリピン政府は問題を国際化・多国間化することに失敗したのです。
いずれにせよ、Glaserの指摘の正しさに変わりはありません。彼女の小論は、日本の政府だけでなく、日本の産業界にとっても一定の意味を持つでしょう。
[特集] 中国の空母と、拡張する軍事力の実態
[特集] 尖閣諸島問題
[特集] 習近平と中国 そして今後の日中関係は?
■「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。