2022年12月9日(金)

韓国の「読み方」

2020年12月17日

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澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、元ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15~18年論説委員(朝鮮半島担当)。18年4月から外信部長。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、『韓国新大統領 文在寅とは何者か』(17年、祥伝社)、『新版 北朝鮮入門』(17年、東洋経済新報社、礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著)など。訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。

韓国社会の深刻な分断が背景に

 文在寅政権がこれほど強引な国会運営をできるのは、コロナ第1波制圧で支持率が高かった時に行われた総選挙で圧勝したからだ。与党はその後、慣例として与野党で分配していた国会常任委員長のポストを与党で独占し、与野党対決法案はすぐ強行採決で決着をつけるといった国会運営を続けている。

 背景にあるのは、朴槿恵政権以降に深まった韓国社会の分断だろう。韓国はもともと保守派と進歩派の対立が激しかったのだが、それでも実は中間層が最大勢力だと言われてきた。その中間層がどんどん少なくなって両極に分かれて行くという、米国のような現象が進んでいるのだ。

 だから自陣営であれば、多少の問題には目をつむるという現象が起きる。日本でも「タマネギ男」として有名になった曺国(チョ・グク)前法相を巡るスキャンダルは、その好例だろう。与党支持の進歩派で曺氏を批判する人は一部にとどまり、政権支持率には全くと言っていいほど影響を与えなかった。後任の秋美愛法相が息子の兵役スキャンダルを無傷で切り抜けたのも、同じことだ。

 高官犯罪捜査庁の庁長人事の場合、尹錫悦氏の人物像を見誤って検事総長にしてしまったというトラウマもありそうだ。

 尹氏は、朴槿恵前大統領が当選した2012年大統領選に情報機関が介入した事件の捜査を指揮して朴政権と対立し、左遷された。文政権はその尹氏を引き立て、2019年6月に異例の抜てき人事で検事総長に起用した。「敵の敵は味方」だと考えて検察改革をやらせようとしたのだが、「尹氏は権力におもねず果敢な捜査をする一方で、検察という組織への忠誠心が強い人物」(韓国紙のベテラン記者)だった。結果として、現政権のスキャンダルを次々と捜査して、文政権にとっては目の上のたんこぶのような存在になった。

 だから多少の無理をしてでも、「高官犯罪捜査庁の庁長は『きちんとした』人物を選ばないといけないと考えている」(同)のだという。

 与党重鎮の国会議員が12月初め、韓国のラジオ番組で政権支持率について次のように話していた。

 「保守層からの支持は、ずいぶん前に離れている。最近の支持率低下の原因が一部の進歩派による離反ということであれば、高官犯罪捜査庁設置法の改正案が成立し、どのような形であれ検事総長の問題が決着すれば、結集力が再び高まっていくだろう」

 この見立てが当たるかは、今後の展開を注視する必要がある。コロナの感染拡大によっても、政権支持率は左右されるはずだ。ただ、今回の支持率低下を単純にレームダック化の兆しだと決めつけるのは単純すぎるだろう。この程度の上下は、何回も繰り返されているのだから。

  
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