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2021年1月3日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

 中西さんの提案する「家族のための成人式」とはどんなものか。振り袖などのレンタル着物を選び、写真を撮るのが定番だが、本番前に母娘で着付け教室に通うことを提案して「思い出作り」を応援する。また、写真も1枚だけではなく、プロの写真家が撮影した20カットの写真をアルバムにする。

 さらに、記念品として父母と娘の3本の「ハタチリング」を作り、リングの内側に文字を刻む。

写真左:「ハタチリング」などのジュエリー、写真右:アルバム

 成人式のマーケットにはまだまだポテンシャルがある、と中西さんは見る。バブル期の娘の成人式では、振り袖の購入に48万円を使い、写真撮影に2万円をかけていた。現在は、振り袖はレンタルに変わって約20万円、写真撮影に5万円を使うとして、25万円が「未消費」に終わっている。プロデュースの仕方によっては、その25万円が掘り起こせる、と考えているのだ。女性60万人が25万円を使えば1500億円の市場だ。

 実は、呉服市場はバブル期前に2兆円産業と言われていた。それが普段の生活から着物が消え、趣味の領域になっていくに従って市場規模も縮小、今では2600億円程度とされる。10分の1の市場になってしまったのだ。しかも、さらに年々減少が続いている。

 そんな中で「成人式」だけは着物を着るのが当たり前の、唯一の機会になっている。その成人式をきっかけに着物にお金を落としてもらえば、呉服業界も成長するのではないか。

 中西さんは、もともと勤めていた会社が、呉服販売大手の「いつ和」(本社・新潟県十日町市)に買収されたのを機に18年に独立。「ソーシャルメイク」という会社を立ち上げ、「いつ和」とコンサルティング契約を結んだうえで、成人式サロン「KiRARA」の事業を引き続き支援している。家族で子どもの成人をどう祝うか、トータル・プロデュースするというのを引き続きお店のコンセプトとしている。「いつ和」への売却時には2店舗だったものが、現在は首都圏で8店舗を展開するまでになった。年間800家族が「家族のための成人式」を形にしている。

1号店となった「成人式サロンKiRARA フルルガーデン八千代店」

 呉服市場にとって、成人式にはもうひとつの魅力がある。

 約半数の「男性」はほとんど着物を着ておらず、仮にレンタルで紋付き袴を着たとしても金額はわずか。まったくと言ってよいほど、お金を使っていないのだ。家族にとっては、息子の成人式も娘と変わりなく重要なイベントのはず。女性と同額の50万円を新成人の60万人の男性が使えば、3000億円の市場が生まれる。

 中西さんのアイデアで、成人を迎えた息子から母親へ「感謝」のサプライズ・プレゼントも生まれた。母親に贈るネックレスなどもサロンに用意している。成人したばかりの息子がアルバイトなどの稼ぎで買うのが前提なので、価格は4万8000円に抑えてある。

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