2024年4月19日(金)

使えない上司・使えない部下

2021年1月8日

ここを卒業しなかったら、今の自分はない

 現役の頃の「使えるトレーナー」?選手だった自分が、トレーナーのことを「使える」なんて思わないですよ…。この方がいたから、ボクシングを続けることができたと思える人はいます。それが神戸拳闘会のトレーナーの板東芳昭さんで、基本的なことを徹底して教えてくれました。基本に忠実で、「コンビネーションを正確に」「左のボディブローを重点的に」「左をよく使うように」「力まないように」と練習や試合中に言われたのを覚えています。

 坂東さんは基本的なことができるようになったのを確認したうえで、いろいろと任せてくれました。もちろん、丸投げではありません。型にはめようとしたり、考えを押し付けようとはせずに教えてくれます。観察したうえで、「鈴木はここまではできる」と判断しているようでした。段階を踏んでリードをしてくれます。例えば、「次の試合ではこのぐらいのことができるようになろう。その次の試合では、このように戦おう。そのために、こんな具合に練習をしよう」。

 このように丁寧に教えてくれるのです。一度にすべてを押し込むことはしません。坂東さんのもとで、ずいぶんと力をつけることができました。何を言われても、反発心を感じません。どんどんと強くなっている自覚がありましたから…。坂東さんの教えに従えば、絶対に大丈夫だと思っていました。

 あの頃、憧れだったのは外国人ではメキシコのフリオセサール・チャベス選手。日本では、ファイティング原田さんや大場政夫さん。原田さんは、あの闘志。本当に上手い方です。大場さんは倒されても立ち上がり、逆転KOをしたりしましたよね。

 将来、期待する選手は多いですよ。特に期待しているのは私と対戦した渡辺雄二さんの甥の高山涼深選手。私の先輩2人と対戦した大橋ジム、チーフトレーナー元東洋太平洋フェザー級チャンピオン松本好二さんの長男、松本圭祐選手。今、凄いのは井上尚弥選手。どんどんと活躍をしてほしい。

 機会があれば、また、ボクシングに何らかの形で関わりたいですね。フィットネスインストラクターは今後、オンラインを使った形でのレッスンも視野に入れていきたいと思っています。

 自分の話になって恐縮ですが、校則や規律が厳しい高校(日本航空高等学校)を卒業しました。振り返れば、ボクシングに最も役立った学園生活でした。当時は、全寮制で朝6時台に起こされ、滑走路をランニングします。寮には、テレビがない。洗濯板で服や下着を洗います。お湯は使えず、水のみでした。自由に外出はできません。男子は1年がみんな丸坊主で、2年、3年は短髪で、「航空精神」を叩き込まれます。校外訓練で、三宅島を荷物担いで島内一周をしたりしました。海岸にテントを張って就寝していたら、台風が接近し、テントに波が入り、雨の中、荷物を担いで10㎞程を歩き、避難した思い出があります。

 YouTubeに、高校2年の時(1985年)に制作されたプロモーションビデオがアップされています。寮生活や学園行事などの映像です。ちなみに、極真空手創始者の大山倍達総裁は、日本航空高校の卒業生です。こんなに厳しい環境で3年間生活をすることができたから、ボクシングの練習、試合も東京に一人出てきた時も苦しくはなかった。あの頃の在校生たちとは、接点はもうないですが、ここを卒業しなかったら今の自分はないと思います。私のル―ツなのです。感謝しています。

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