今回は、ベンチャー企業・WARCの執行役員の篠原さくらさんに取材を試みた。WARCは成長企業の管理部門のハンズオン支援、管理部門人材紹介、HR techサービスを提供する。
篠原さんは2012年、IT企業のサイバーエージェントに新卒として入社。人事マネージャーとして新卒採用や広告部門事業などに関わる。その後、デロイトトーマツコンサルティングにて人事コンサルティングに従事。2018年12月、ベンチャー企業・WARC執行役員に28歳で就任。人事責任者として採用や定着、評価など全般をリードする。
篠原さんにとって「使えない上司、使えない部下」とは…。
「使えない」なんて言葉は、NGワード
「使える、使えない」は、私にとって縁のある言葉です。今、勤務する会社で役員や管理職がいる前で話したことがあります。「「使える、使えない」といった言葉は社員を大切にしていないように聞こえるから、使うのをやめましょう」。社員の中には「篠原さんの前で「使えない」と言うと絶対怒られる。社内でそんな共通認識あるよね」と言う人もいます。私自身、新卒で入社したサイバーエージェントにいた頃から何度も考えてきた言葉です。
サイバーエージェントは、とても社員を大切にする会社でした。2012年に入社し、2年目にリーダーとなり、約半年程後にマネージャーになりました。上司との初めての面談でこんなことを言われたのを強く覚えています。
「チームメンバー(部下)を大事にすること。そのマインドを見せながら仕事をすること。それらがきちんとできていれば、メンバーはついてくる。メンバーをリソースや物扱いするのは言語道断。一番やっちゃいけないことだからね。「使えない」なんて言葉は、NGワード。リーダーは、愛を持って接してほしい」
あの頃は、「どうしたら、使えるリーダーとメンバーに思ってもらえるだろう」と考え、そこに力を入れていたように思います。振り返ると、そこを履き違えていたのかもしれません。チームの中で最も成果を出していれば、みんながついてくると思っていて、それぞれのメンバーの力を最大限に引き出すことはできていなかったのです。
上司からはある時、「プレイング・マネージャーであるべきなのに、プレイヤーの仕事しかしていないよ」と指摘され、ハッとすることもありました。確かに私は、プレイヤーとしてがんばっていれば、メンバーは必ずついてくると思っていたのです。この頃から、チームの先頭を走るという考えがなくなりました。それぞれのメンバーを信じて、仕事を任せる。そして、個々の能力やパフォーマンスを最大限に発揮してもらえるようにする。この考えが、私のマネジメントやチームビルディングの根本になっています。
厳しいだけではなく、フォローがうまい
その後、マネージャーになり、経験を積み、コンサルティングファームに転職しました。そこで仕えた上司には、多くのことを教わりました。私がとても信頼していて、すごいなと思うことが多い方です。
部下を育てようとする愛を持っていて、仕事を大胆に任せてくれます。厳しく教えながらも、何かの問題があれば責任を取ってくれるのです。20代の私に、通常は任せないような大きな仕事もバンバンと与えるのです。私がそれを望んだからなのですが、当時は経験が浅いこともあり、失敗もしました。フォローをしてくれながら、区切りがついたところで厳しいフィードバックをしてくれます。
たとえば、マインドやスキルの欠落、構造化に徹底的にこだわった議事録の取り方、クライアントのキーマンの前での話し方や語尾の使い方に至るまで細かい部分も含みます。根本的に、いろんなことを教わりました。仕事の考え方や生き方にまで及びます。身なりなど言いづらいであろうことまで指摘を受けました。いずれもが私が求めていたものであり、課題感を持っていたことばかりだったのです。
細かいところまで必要以上に指摘するマイクロマネジメントではありません。私は、上場企業の役員を前にしても、ファシリテートがきちんとできる力を身に付けたいと思っていました。上司はそのことを心得て、足りないところを愛を持って厳しく指摘してくれていたのです。私に嫌われるんじゃないか、仕事をしなくなるんじゃないかといった思いはなかったようです。そして、なぜこういうことを指摘したのかまで丁寧に説明してくれます。厳しいだけではなく、フォローがうまいのです。
例えば、仕事が終わった直後は厳しい。だけど、1週間に1回のOne on Oneミーティングでは、1週間の仕事についてチャレンジしたことを含めて正当に評価してくれます。私が進みたい方向を常に心得ていて、そのためには今何が必要か、上司としてどうなってほしいのかと話すのです。