使えない上司・使えない部下

2020年12月11日

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 今回は人材紹介サービス、求人メディアの運営、転職・就職支援業などを行う、パーソルキャリア執行役員の大浦征也(おおうらせいや)さんに取材を試みた。2002年にインテリジェンス(現社名:パーソルキャリア)に入社し、人材紹介事業、企業の採用支援、人事コンサルティングなどに関わる。

(Aleksei Morozov/gettyimages)

 その後、キャリアアドバイザーとして転職希望者のキャリアカウンセリングやサポートに携わる。これまでに支援した転職希望者は、1万人を超える。その後、キャリアアドバイザーの総責任者となる。法人営業部隊も含めた地域拠点の総責任者を経て、2017年より現職。17年4月~2020年5月まで転職サービス「doda(デューダ)編集長」を務める。

 社外にて、一般社団法人人材サービス産業協議会のキャリアチェンジプロジェクト、ワーキンググループメンバーにも名を連ねる。

キャリアやスキルにこだわりすぎると、不幸な結果になる

 「使える、使えない」といった言葉は、弊社内では聞いたことはありません。社員をモノ扱いする社風ではないのです。メインの業務は転職支援や採用支援ですから、メンバー(社員)は様々な転職の状況や他社のことを知っています。弊社がメンバーにとって魅力ある職場でなければ、辞めてしまいかねません。会社として社員の働く環境を常により良きものにしていかないと、定着しないのです。

 私は20年程、転職を希望する方の支援などをしてきました。そのような方の話をお聞きすると、勤務される会社には社員を評価する物差しが、もしかすると1つしかないのかもしれないと思う時があります。例えば、40代の男性が大手銀行に20年程勤務していたのですが、リストラの対象になりました。支店長として地域の多数の中小、中堅企業の経営者と親しい関係を作り、活躍していました。しかし、支店長よりも上のポジションにはなかなか上がれないようだったのです。

 銀行の物差しで測ると、必ずしも十分な評価ではなく、支店長より上のポジションのポストは用意されていなかったのかもしれません。私は、銀行の物差しで十分な評価でなくとも、転職先の会社でははるかに高い評価となる場合が多々あることを知っています。天下りのような銀行からの出向・転籍の流れがなくなってきた現代でも、中堅、中小、ベンチャー企業にはこういう銀行員を求めているケースがたくさんあるのです。そのようなことをご本人に説明したところ、納得され、転職をしていかれました。今では、転職先の会社で活躍をしています。

 かつて、大手銀行は新卒時の「就職勝ち組」の一つであったのだろうと思います。この価値観をもとにすると、大手銀行以外の例えば、中堅の金融機関や他の業種の中堅企業へ転職すると、「転職負け組」と見る人もいたのかもしれません。例えば「彼は大手銀行で50点だったから、50点の会社に転職したよね」という捉え方です。

 今の転職は、こういう感覚ではありません。このあたりに、多くの人が気づいているのだと思います。転職を考えるうえで、以前は「キャリアが大切」と言われました。もう、そのような時代でもありません。一時期、「スキルで転職する時代」とも言われていました。現在は、スキルが陳腐化しやすくなっています。

 現在、転職市場においてはキャリアやスキル以上に大切なものがあります。高い価値があるのは、前述のようなその人にひもづくネットワークやポータブルに持ち運びできる仕事やその進め方です。銀行員としての豊富な経験や高い金融知識はもちろん、例えば、企業経営者や地域の人とコミュニティーを作り、地域の金融機関や社会に貢献する力を持っていることが大切です。

 そのこと自体に、高い価値が生まれる時代になっているのです。金融知識だけで転職市場で勝負しようとすると、上手くいかない時があります。その場合の「上手くいく」とは、ご本人が転職先の会社できちんと納得できていることを意味します。心から納得できている方は、仕事のパフォーマンスが良くなっていく傾向があるのです。

 さらに言えば、「この会社にいないと、その仕事ができない」ということはなくなりつつあるのです。例えば、自分の考えを発信する仕事をしたい場合、大手のマスメディアに入社しないとできない時代ではありません。インターネットの SNS を使い、自分の考えを伝えることができます。

 その意味では、大手のマスメディアで情報を発信してきたキャリアやスキルですら、転職市場においては価値が陳腐化する可能性があるのです。むしろ、キャリアやスキルでスコアリング(点数化)され、本人がそれを必要以上に意識していると、転職では逆に不幸な結果になる場合があり得るのです。

 転職が上手くいく人に、ある程度共通しているものがあります。その一つが自己認知です。例えば自分は何ができるのか、今後、何をしていきたいのか。一方で広い視野に立ち、社会の中で何ができるか。何をしていくべきか。これらを考える力を持っています。つまり、柔軟性でしょうね。

 逆に言うと、自分が大切にしているものをよくわかっているのです。在職中から社外の人と接点があり、社会との関わりもよく知っているのだと思います。例えば、銀行で経験した業務がどういう業界のどんな会社でどういった形で活きるかをきちんと心得ています。

 このあたりを把握していない人は結構います。例えば、融資先の会社の損益計算書はきちんと見ていたのでしょうが、そこで働く社員の苦労など、つまり、人としての側面を見ることはあまりしていなかったのかもしれません。そのようなアンテナをふだんから張っているかどうか。それが転職する時に有利に働くことがあります。

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