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WEDGE REPORT

2021年3月18日

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原 丈人 ( はら・じょうじ)

危機管理会社法制会議議長

 27歳まで中米考古学研究、渡米し光繊維事業を起業。その後、先端技術分野の事業を次々とおこし90年代に全米第2位のベンチャーキャピタルの経営者となる。現在、国連経済社会理事会の特別協議資格を持つ合衆国非政府機関のアライアンスフォーラム財団会長。米欧日で技術開発を率いるデフタパートナーズ会長。国連政府間機関特命全権大使。安倍政権で経済財政諮問会議専門調査会会長代理、首相在任中7年間にわたり内閣府参与を務めた。2020年9月危機管理会社法制会議議長に就任。
 

 この間30%から23.2%に法人税減税がなされたが、減税分はどこに分配されたのであろうか? 昇給を抑える一方で配当を増やすような企業行動はポストコロナには見直す必要がある。社員を大切にして守ってこそ会社は繫栄し、その結果として株価も上がり株主も潤うということをはっきりと自覚する時代に入っていく。

 しかも民間企業の意思決定の自由を侵しかねない仕組みとなっていることが危惧される。何かと言えば、社外取締役は2人以上にしなければならないとか、指名委員会等設置会社の指名委員会が指名した最高経営責任者(CEO)は、取締役会で多数が反対しても覆せないことなどだ。これでは民間が自社に適合した取締役会を設計し、運営していくことが大幅に制限されることになる。

 これではまるで独裁国家の会社法みたいではないか。自由闊達な議論が行われ自由度の高い経営ができるように会社法は改正すべきだ。

 米欧のコーポレートガバナンスをお手本に我が国が取り入れた仕組みや制度は全面的に書き換えるべきことをポストコロナの時代が要求している。

 日本国内でもいつの間にか「内部留保は悪、企業は儲けを吐き出して株主に還元すべき」という考え方が当たり前という風潮になった。しかし、コロナ禍が示したように、不確実性は企業経営にとってはつきものだ。それどころか、気候変動に伴う災害激甚化や、米中対立に伴う有事、経済安全保障面など、今後、「不確実性」はますます多様化し、われわれ人類の前に立ちはだかるだろう。

 だからこそ、たとえ数年間、十分な売上が立たなくても従業員とその家族を守るための資金として、内部留保を保持しておくことは大切なのだ。このような会社法の改正に向けた理論的な支柱になっているのが「公益資本主義」だ。

公益資本主義の本質
とは何か?

 そもそも、新型コロナ以前からすでに資本主義は大きな危機を迎えており、コロナ禍によって、その危機がさらに露呈し、増幅させてしまったのではないだろうか。背景には、前述の通り「会社は株主のもの」という米国流の企業統治(コーポレート・ガバナンス)のあり方が一般化していることにある。

 では、世界を救えるものは何か。それこそが、公益資本主義である。公益資本主義は、社員、顧客、仕入れ先、地域社会、地球といったすべての「社中」に対して貢献することで企業価値を上げ、その結果として株主にも利益をもたらすものだ。

 ここでいう「社中」とは、一般的に言われている「ステークホルダー(利害関係者)」とは別のものだ。

 ステークホルダーとは、利害が対立する人、利害関係者を指す。マルクス、エンゲルスが唱えたように、労働者と資本家は対立関係にあるという考えのもと、交渉して物事を決めるのでステークホルダーと呼ばれる。

 一方で「社中」とは、会社を成功に導くために協力する仲間のことを指す。利害関係者間の合意は監視役(コンプライアンス)が必要となるが、社中の間ではお互いを監視する仕組みは不要だ。日本は世界で最も長寿企業が多い国だが、長期にわたって栄える会社に必要なのは全社員が企業理念をよく理解し実践することであり、コンプライアンスではない。

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