Wedge REPORT

2021年2月27日

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 会社は社会の公器である─。原丈人氏(PART1参照)から「公益資本主義」という考えを聞いたとき、三谷産業(金沢市)の三谷充会長は、全く違和感がなかったという。

三谷充会長。原丈人氏とは慶應義塾大学の同窓で20代からの付き合い。公益資本主義の考え方に違和感を覚えなかった根本には「父親が社員を大事にする経営者だったことを幼い頃から間近で見てきたからだ」と振り返る (WATARU SATO)

 同社の創業は1928年(昭和3年)。石炭商からはじまり、化学品を中心に産業用資材の商社として事業を拡大し、94年からはベトナムでも事業をスタートさせた。2020年3月期の売上高776億円、連結従業員3355人の東証一部上場企業である。

 三谷会長によると「終戦直後の50年頃から社員旅行を行い、60年には社員のための保養所を軽井沢に開設。社員が100人もいない頃のことだ」という。そのほか、55歳で一度退職金を支給することで住宅ローンの負担から身軽になるようにしたり、亡くなった社員の遺児については、大学を卒業するまで費用を負担するという制度も設けた。

 三谷会長自身はもう一歩踏み込んで、全社員の子どもの大学費用として、年間国立大59万円、私立大90万円を4年間負担する制度を作った。「気持ちよく働いてもらうため」と三谷会長は事もなげに笑う。しかも、社内には社員が休憩中などに利用できる専属のマッサージ師4人が常駐する。いずれも視覚障がい者だ。

 もちろん、経営者としての厳しさも覗かせる。「世の中、年功序列から成果型にシフトしてきた。そうすると、どうしても出世できない、給与が上がらない社員も出てくる」としたうえで「ただ、その影響を子どもに与えたくない。子どもに罪はないから」。そんな思いから生み出した制度でもある。

 ただ、三谷産業は東証一部の上場企業だ。株主からのクレームは入らないのだろうか。「株主には安定配当を約束している。配当を3年分積んでおり、赤字でも3年間は出せる」という。つまり、目先の業績次第で配当の増加を求めることよりも、三谷産業の経営方針に賛同する投資家を重視しているということだ。

 公益資本主義の実践という点では、三谷産業の関連会社で、三谷会長が同じく会長を務めるニッコー(石川県白山市)で四半期決算の開示を止めた。「四半期決算の開示を止めたことへの批判もあったが、問題ない。手間がなくなってむしろ良かった」と振り返る。「決算短信は証券取引所の適時開示ルール、決算公告は会社法、有価証券報告書は金融商品取引法など、縦割りとなっていることも問題ではないか」と指摘する。「企業が上場するには数億円単位で費用がかかっている。全ての要件を満たすものに一本化してみてはどうか」と提案する。

 三谷会長は「儲かるビジネスではなく、良いビジネスをする。その結果、必要とされるビジネスになれば残りやすい」と話す。「逆に、利益を出すことを前面に出してしまえば、その心が知られてしまい、顧客は引いていく」という。

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