2024年7月16日(火)

Wedge REPORT

2021年2月16日

 初収穫は今年5月で7㌧の生産を見込んでいる。次年度は倍に生産量を増やすという。25年度には3億円の売上目標を立てる。ワサビは暑さに弱いので夏は生産できない。そのため、夏はミニトマトの生産を計画している。「持続的なワサビ生産事業はどうすれば可能になるのか、それを確立するのが我々の仕事」と、植木さん。そして何より「一から事業を立ち上げるという経験はかけがえのないもので、これはもし銀行員に戻ったとしても役立つ」と話す。

植え終えたばかりのワサビの苗。今年5月の収穫を待つ (WEDGE)

地方創生は
成長産業になる

 YMFGはこの5年ほどで、バンカーズファームの他にも、地域商社、観光会社、人材紹介会社など、様々な非金融事業会社を新たに立ち上げてきた。この原動力になったのが、地方創生専門コンサルティング会社YMFG ZONEプラニング(ワイエムゾップ)だ。以前にも「地域振興部門」はあったものの、役回りとしては金融支援をしていたのに対して、ワイエムゾップはその守備範囲を超えることが最初から意図されている。「点ではなく、面で地域に対応する存在として発足した」と、同社上席部長の品川智宏さんは話す。

 マイクロソフトと提携して中小企業のIT化を促進したり、PFI事業(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ=公共施設等の建設、維持管理、運営など民間の資金、経営能力を活用する)等の官民連携事業の創出や案件形成に取り組んだり、自治体と事業者の間に立ってとりまとめ役になるなど、地域の基盤作りや地域経営の視点に立ったまちづりに注力している。

 この5年間事業を行うことで「地域創生の〝奥行きの深さ〟を改めて認識させられた」と、品川さん。そこで、都市圏の事業者との連携や、農業・観光など、より特化した事業会社を発足させることになった。ワイエムゾップは当初10人でスタートしたが、20年には40人を超え、さらに増加する計画だという。

 金融グループ全体の収益に比べまだ大きくはないが「地方創生は成長産業になる可能性を秘めている」と、品川さんは手ごたえを語る。地域振興を新しいミッションにすえたYMFG。前例踏襲を打破したからこそ可能になった取り組みだ。

Wedge2月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■資本主義の転機 日本と世界は変えられる
Part 1       従業員と家族、地域を守れ 公益資本主義で会社法を再建
Part 2       従業員、役員、再投資を優先 新しい会計でヒトを動機付ける       
Part 3       100年かかって、時代が〝論語と算盤〟に追いついてきた! 
Part 4     「資本主義の危機」を見抜いた宇沢弘文の慧眼
Part 5       現場力を取り戻し日本型銀行モデルを世界に示せ    
Part 6/1    三谷産業  儲かるビジネスではなく良いビジネスは何かを追求する    
Part 6/2    ダイニチ工業  離職率1.1% 安定雇用で地域経済を支える   
Part 6/3    井上百貨店  目指すは地元企業との〝共存共栄〟「商品開発」に込める想い       
Part 6/4    山口フィナンシャルグループ  これぞ地銀の〝真骨頂〟地域課題を掘り起こす
Part 7       日本企業復活への処方箋 今こそ「日本型経営」の根幹を問え

  
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◆Wedge2021年2月号より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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