この(2)式を現在世代と将来世代の受益と負担に注目して、現在と将来の国民が生涯を通じて政府に支払わなければならない負担額(TP、TF)から生涯を通じて政府から受け取る受益額(BP、BF)を差し引いた純負担額の観点から書き換えると、
(TP-BP)+(TF-BF)=C+D・・・(3)
となる。
このとき、各世代毎に現在価値に換算した生涯の負担から受益を引いて得られる数値を、生涯純税負担額もしくは世代勘定と言う。世代勘定とは、ある世代に属する人が、今後死ぬまで政府から受け取る金額と支払うことになる金額との差額の平均的な値を表すものである。
さらに、この(3)式を言葉で言い換えると、
現在世代の純税負担額の現在価値+将来世代の純税負担額の現在価値=政府消費額の現在価値+初期時点の政府純債務額
となる。
この式は、現在価値で測った政府の将来にわたる消費支出と現在政府が抱えている債務残高は、現時点で生きているすべての国民が支払う純税負担額と将来生まれてくる国民が支払わなければならない純税負担額によってすべて賄われなければならないということを意味している。逆に、この異時点間の政府の予算制約式が満たされない場合、政府財政は破綻することとなる。
ある世代の負担が軽減されれば
必ず他の世代の負担が増加する
ところで、いま、現在世代、将来世代の純税負担の現在価値、すなわちそれぞれの世代の世代勘定を順にGAP、GAFとする。結局、各世代の受益と負担の観点から書き換えると、政府の異時点間の予算制約式(1)式からは、
GAP+GAF=C+D・・・(4)
という世代会計の基本式が得られることが分かる。
さらに、この(4)式を将来世代の純税負担額GAFについて変形すると、
GAF=C+D-GAP・・・(4’)
と書き換えることができる。