Washington Files

2021年2月22日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

トランプのツイート

 しかし、この追跡調査結果でさらに衝撃的なのは、逮捕者たちの大半が教育的にも、社会的にもある程度のレベル以上の階層であったにもかかわらず、各州において州選管、州議が裁定を下し、州裁、連邦最高裁が後押し、米上下両院協議会においても最終認定した大統領選挙結果について、トランプ大統領が主張してきた通りの「大規模不正選挙」説を真に受けてきたという事実にほかならない。そして議事堂乱入事件後も、バイデン当選を認めず「トランプ再選」を何の疑いも持たずに信じて切っていた。

 根拠もなく客観的事実と全く異なる幻想を抱いてきたとも言える。

 なぜそのような判断に至ったかについて、逮捕者の何人かは警察の聴取に対し、以下のような供述をしている。

 「ワシントンに来て選挙結果否定の運動を支持するよう大統領が呼びかけるのをTVニュースで見て、応援しようと思ってやってきた。自分としてやれることはそれくらいだと思った」(テキサス州のワイナリー経営者)

 「事件の2週間前に、大統領が支持者向けツイートで『1月6日にワシントンDCででっかい抗議集会がある。みんなで出かけようBe there。一波乱起こるぞIt’ll be wild!』と発信したのを見て、自分もすぐに『私も行くI’ll be there』とリツイートした」(カリフォルニア州ビバリーヒルズの女性美容室経営者)

 「われわれも大統領のツイートを見て仲間たちとワシントンDCに行くことにした。『出かけてひと騒ぎしよう』と声を掛け合った。そして議事堂になだれ込んだが、これは大統領が『議事堂に向かおう』と直前のホワイトハウス前集会でアピールしたからだった。ただの一市民でなく米国最高司令官が直接指示したのだから、問題ないと思った」(マサチューセッツ州ボストンの団体責任者)

 これらの供述に共通点があるとすれば、いずれもアメリカの最高指導者の演説またはツイートによる呼びかけの“呪縛”となり、まともな判断力を失っていた点だろう。

  トランプ氏については大統領就任以来、自らのツイート、記者会見での虚言癖はアメリカの主要メディアで繰り返し報じられてきた。とくに大統領発言の真偽すべてをチェックするため編集局内に「ファクト・チェッカー」班を特設し追跡調査してきたワシントン・ポスト紙によると、「全くの虚偽」「不正確な内容」「誇張」発言回数は過去4年間で3万8000回近くにも達した。(本欄1月18日付け拙稿『虚偽と欺瞞でアメリカを牛耳ったトランプ政治』参照)

 このような実際とは異なる発言について、トランプ政権の側近たちは「alternative factsもう一つの事実だ」と開き直り、大統領発言を黙認し続けてきた。

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