Washington Files

2021年2月22日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

病めるアメリカ社会の病巣

 今回の大統領選でバイデン当選が確定した後も、トランプ支持者に向けて発信した「大規模選挙不正」「トランプ再選」もこの「もう一つのファクト」ということになる。そしてこうした「もう一つのファクト」に重きを置いてきたのが“トランプ・チャンネル”とも言われてきた「Fox News」、超保守派の論調を垂れ流す新興のチャット・メディアだ。全米の伝統ある主要新聞、テレビ・ネットワークとは異なる、いわば「alternative media」にほかならない。

 大統領選挙結果については、各州において選挙管理委員会が超党派的立場から手作業で票の数え直しなど、徹底した検証を行い、州政府も公式に認定した。その後も、トランプ派から起こされた訴訟を受け、州最高裁、さらに連邦最高裁においても審理を重ね、「バイデン当選」の正当性を確認した。このこと自体、誰にも否定しようもない既定事実として大多数の国民も受け入れたはずだった。

 だが、驚くべきことに、投票から1カ月以上たった12月半ば時点で、一般のトランプ支持有権者のみならず、共和党上下連邦議員249人のうち208人がバイデン当選を認めず「態度保留」の姿勢をとり続けたことが明らかにされた。(米ワシントン・ポスト紙12月15日付け報道)

 まさに、新興メディアの影響力が、ワシントン中央政界にも浸透しつつあることを示したものと言える。 

 さすがにSNSの中で最大規模を誇る「Twitter」社、「Facebook」社などのメディアは、米議事堂乱入事件を教訓として、先月以来、社会に対する悪影響を極力抑えることを目的として、トランプ氏のアカウントをウェブサイトから締め出す措置を講じている。

 しかし、比較的高い視聴率を持つ「Fox News」に、これまでの偏向報道を軌道修正する兆候は見られない。そしてほかにも数多くのSNS、零細ケーブルTVなどのニューメディアが今後も出現し「もう一つの事実」報道がまかり通る事態が予想される。

 本来ひとつしかないはずの「事実」が複数拡散することは、さらなる社会の混乱要因となりかねない。病めるアメリカ社会の病巣は深く、事態は極めて深刻と言わざるを得ない。

  
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