多角経営で生き残る
もう一つは兵庫県の山間地の山東町に本社を置く藤本グループだ。同グループの藤本剛副社長(40歳)は創業者から3代目で2005年に社業を引き継いだ。
こちらはヤブサキ産業とは異なり人口の少ない中山間地域のため、どれだけ地域の生活と密着したビジネスを展開できるかがポイントになる。5年前から石原氏のアドバイスを受けるようになり、多角化路線の切り札として19年の8月にオープンしたのが食事もできるカフェ「ナッツ」だった。近くの遊休地を活用して野菜やコメを栽培し、朝取りした野菜を使ったランチなどを提供している。そうしたところ「近くの高齢者だけでなく意外と若者が来るようになり、大阪や神戸から車で来る客が増えたて売り上げ増に貢献するようになった。いまでは油以外の売上比率が3分の1までに拡大、この方向は今後も続けていきたい」と話す。
「石原さんは財務関係も熟知しているので、数字的にも頼れる存在になっている。年度初めに全社員集めて説明する際には、一緒に参加してくれて社員も石原さんの指導を理解してくれている」と指摘、藤本社長の参謀のような役回りを果たしている。
時には厳しい提案も
相談を受ける中小企業からの相談で多いのが、経営者の跡継ぎがいないために起きる事業継承の問題だ。その中で、必要と判断すれば一部事業の撤退・売却も提言し実行しているという。企業を存続させるためには厳しい提案も必要になるようで、耳障りの良いアドバイスだけでは資金力の弱い中小企業の場合は生き残れない。
それに伴い、M&A(企業買収・合併)のサポート、相続の相談にも乗っている。「全財産を投げ打って人生をかけて商いをしているのが経営者なので、経営者の財産を守りつつ、会社を存続させ、雇用を守ることを第一義とし、限られた経営資源(ヒト・モノ・カネ)を最適に配分し、最大のリターンを得るためには何をすべきかを経営者と考えている。クライアントからはコンサルタントというよりも、難しい意思決定を迫られたときにサポートしてくれるパートナーのような存在といわれている」と話す。
長年、中小企業の経営に携わってきて一番難しいと感じるのは、会社の成長と持続を両立させることだという。「一時的に売上を伸ばすことはできても、それが続かなければ意味がない。一方で、成長もせず、ただ生きながらえているだけでは、そこにいる社員も給与も上がらず、存在意義を感じなくなる。毎年成長していく中で組織が育ち、世の中に必要とされながら50年、100年と存続し続けるような会社になるようサポートしていきたい」と指摘、業種業界を問わず中小企業の持続的成長に寄り添いたいとしている。
石原氏は今後のガソリンスタンド業界について「真に顧客に必要とされる会社、具体的にはインフラ拠点として地元密着で付加価値の高いさまざまなサービスを提供し、生活に不可欠な存在にならなければ残れない時代になる」と予測する。そのためにもガソリンスタンド特約店やその経営者には「環境が厳しいからと下を向くことなく、顔を上げて10年後のビジョンを描くこと、そして、そのビジョンを実現するために何ができるかを考え続けることが必要」と石原氏。2030年まであと10年、ガソリンスタンドがどのように変化対応し生き残っていくかが注目される。
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