2024年12月22日(日)

Wedge REPORT

2021年2月19日

アシストスーツ

 人手に頼らざるを得ない重労働が伴う建設現場の掘削作業で、作業の負担を軽減するためのゴムの力を使ったアシストスーツ「ワーキングアシストAS」が作業関係者に喜ばれている。ゼネコン大手の清水建設の要望に対して、整骨院などにサポーターやコルセットを提供してきたダイヤ工業(岡山市)が共同開発して実用化した。この異業種同士の会社を結び付けたのが、技術やサービスがほしい企業にマッチングを使って提供するリンカーズ(東京、前田佳宏社長)という仲介会社だ。

重労働を軽減

 このアシストスーツはベスト型で、胸回りと腰回りのベルトを締めるだけで着用できる。重量は約500グラムと軽量で、従来の電動タイプと比べると8分の1の軽さ。ゴム製のベスト背面の生地と、利き腕の肩と反対の二の腕を背面で結ぶ肩腕ゴムベルトで、作業員が前かがみの掘削姿勢を採りスコップで土砂をすくおうとすると背面の生地と肩腕ゴムベルトが伸び、逆に土砂をすくい上げる際には両方の生地が縮もうとするゴムの張力によりアシストする力が働き、作業負荷を軽減できる。腰回りのベルトは腰を固定できる骨盤コルセット機能も備え、作業姿勢を安定させ、腰痛の発生を防止できる。

 真夏の現場作業での熱中症予防のため、全体をメッシュ素材とすることで通気性を高め、脇下にはアイシングセルを入れる保冷剤ポケットが付いている。コルセット機能はこれまで同社が整骨院などに納入してきたノウハウを生かすことができたという。当初案では下半身にもアシスト機能を付ける計画だったが、作業員に実際に装着してもらったところ、作業の邪魔になることが分かり、下半身には付けないことになったという。

 マッチングを使った共同開発をすることで、アシストスーツを提供してほしい側と、製造する側の現場の意見を十分に擦り合わせることができた。また下半身のアシスト機能をやめるなど無駄な機能をつけないことで、低価格につながった。販売価格は1着3万3000円(税込)で、電動タイプと比較すると10分の1で製品化できた。

コロナ禍でも新規顧客開拓

 昨年の9月から販売を開始したが、清水建設の現場からは評価する声が聞かれるという。ダイヤ工業によると、ほかのゼネコンや重いものを持ち運ぶ製造現場からも問い合わせが来ており、今年の冬は雪が多いことから雪かき用に使いたいという要望もある。

 今回のアシストスーツの場合は、18年5月に清水建設からリンカーズに建設現場の重労働を軽減できるアイデアの問い合わせがあり、掘削作業などがラクになるアシストスーツにたどりついた。これを製造できそうな企業を募集したところ、1カ月で52社がリストアップされ、その会社に対して清水建設から追加質問などして9社に絞り込んだ。最終的には面談時に既製品を試着して、昨年の夏にダイヤ工業と共同開発することに決まった。

 ダイヤ工業のような中堅・中小企業の多くは、各地で開催される展示会などを活用して新規の顧客の開拓を進めてきた。しかし、コロナ禍によりすべての展示会開催が中止か延期されてしてしまい、中小企業の多くが新規顧客を見つけるのが困難になっている。そうした中で、リンカーズのマッチングを使うことにより、これまで縁のなかった分野からの受注を獲得することができた。岡山市に本社があるダイヤ工業の新市場開拓部門の西田哲史セクションマネージャーは「今後もこうした手法を活用して、全国から新たな顧客を見つけたい」と話している。

 仲介するリンカーズのビジネスは、技術を欲しい企業が同社のネットワークを探索した段階で着手金をもらい、当該企業と面談、マッチングが成立した段階でそれぞれ料金が発生する仕組みになっている。


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