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2021年1月27日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 コロナ禍が長期化する中で東京商工リサーチの発表によると、昨年1年間の企業の休廃業・解散の件数が前年比14・6%増の4万9698件と、2000年の調査開始以来、年間最多となった。政府はコロナで打撃を受けた企業に対して無担保融資や持続化給付金、雇用調整助成金などの支援をしてきたが、休廃業を食い止める抜本的な対策にはなっていない。東京商工リサーチの友田信男常務・情報本部長に企業トップの高齢化が進む中で、休廃業を減らす手立てはないか聞いた。

(Kim Grosz/gettyimages)

―― これほどまでに休廃業が増加した原因は何か。

友田本部長 3つある。一つは、コロナ禍になる前から業績が悪化していた。2つ目で最大の要因は、事業承継ができなかったためだ。3つ目は2つ目とも関係するが企業の代表者が高齢化していることで、これにコロナ禍が加わって状況が悪化し、先行き不透明感が増して企業経営者の中に「あきらめ」が生まれてきた。

―― 業種ではどういうもの、地域的にはどこが多かったのか。

友田本部長 産業別では、サービス業に入るものが約1万5千件と最も多くなった。この中には介護・福祉、娯楽、劇場、パチンコなどが含まれる。介護・福祉が増えたのは、高齢化を当て込んで安易に新規参入したところが行き詰まった。訪問介護事業は「3密」回避を求められてできなくなって、倒産や事業をやめるところが増えた。来店客の減少に苦しんでいる飲食業の休廃業は19年の1606件に対して20年は1711件と6.5%増だが、21年はさらに増加するのではないか。地域的には、アパレル、繊維、機械工具など中小企業の比率の高い近畿が東京と比べて多くなっている。

―― 政府は無担保融資など支援策を行ってきているが、なぜ休廃業を食い止められなかったのか。

友田本部長 政府の支援はどれも1回限りのため、一時的な改善にはなっても、業績悪化を好転させるほどの効果が出ていない。昨年は4月から9月までの半年間で、アンケートした企業の約8割が前年比売上を下回っていた。菅義偉首相は企業に対する無担保融資額をこれまでの4000万円から6000万円に引き上げるとしているが、すでに融資された資金は枯渇してきている。

 金融機関は昨年秋ごろまでは、倒産回避を優先して融資をしていたが、昨年末から融資先企業の過剰な債務を警戒して審査を厳しくし、融資額の減額などをしている。通常ベースの融資審査に戻ってきており、すぐには要望した融資額を実行してもらえなくなっている。

―― 休廃業が増える背景に、事業承継がスムーズに進まないことが度々、指摘されてきたが。

友田本部長 政府は13年から経産省などを中心に事業継承問題に取り組んできている。日本事業再興プランなどを策定して、開業率を引き上げる中で廃業率を考えてきた。これまでは若手のベンチャー企業を開業するにはどうすればよいかガイドラインを示してきたが、廃業をどうやってするのかについては何も示されていなかった。いまは企業の84.2%が60歳以上の経営者になっており、企業経営者に対して事業継承するのか廃業するのかを早めに気づかせる必要があったのではないか。その意味で政府の廃業に対する見通しが甘かった。

―― 政府の支援策も、高齢化、低成長時代に入り変わっていくべきタイミングを迎えているようだが。

友田本部長 日本が戦後成長できたのは人口が増えて、黙っていてもビジネスが成長できたからで、創業100年を超える長寿の老舗企業が多い。それを支えていたのが日本企業独特の家族的な経営だった。だが、人口が減って高齢者が増えて、これまでの支援策と違うものが求められている。それは自立した経営をするための教育をもっとすべきではないか。独自で成長するためには何をすべきなのかを、政府は企業を支援しながら企業と一緒になって探る必要があるのではないか。

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