2~3カ月で連携企業を見つける
今回の製品開発のように、技術が複雑化、高度化が急ピッチで進む中にあって、大企業といえども自社製品の技術開発をすべて自前で行うのは不可能な時代になってきている。つまり自前主義では企業は生き残れなくなりつつあり、社外の技術を活用するオープンイノベーションが重要になってきている。
リンカーズの役割は、こうした時代の要請を先取りしたもので、大企業と中小・中堅企業をつなぎ、地域的に離れた企業同士、業種の異なる企業の技術の連携といったマッチングを手掛けてきている。同社の特徴は、独自のネットワークを駆使してマッチングの作業をシステム化することにより、全国レベルで短期間に相手を探せることだ。
新規顧客の開拓のために営業担当者がわざわざ各地を飛び回らなくても、リンカーズのシステムを使えば、平均で約2~3カ月で、ふさわしい連携先であるパートナーを見つけられるという。
これまでに大企業400社以上がこのマッチングを利用、成約した事例は1300件を超えており、仲介の輪が広がってきている。これを可能にしているのが全国の地方銀行を含めた金融機関との連携、さらには大学、研究機関、地方自治体など技術分野に詳しいコミュニティとの連携で、リンカーズは今後、こうした技術連携が可能になるコミュニティの形成に力を入れたいとしている。
また提携先とまではいかないまでも、企業の製造現場からの「あの製造工程を教えてほしい」「あの添加剤をほしい」といった要望に対してもマッチングを使って答えようとしており、困りごとへのソリューションを提供する黒子的存在になりつつある。
オープンイノベーションを加速
技術開発は自前で行うという習慣を日本企業はなかなかぬぐい切れないでいる。しかし、グローバルレベルで新製品の競争が激化し、世界的には社外の最新の技術を活用しなければ、企業の発展は難しいという状況になっている。
このためリンカーズは昨年11月に、オープンイノベーションの伝道師とも呼ばれている大阪ガス出身の松本毅氏を招へいし、オープンイノベーションを核にして技術連携のコミュニティ作りの動きを加速しようとしている。大阪ガスでオープンイノベーションの導入に尽力、退職後は一般企業の仕組みづくりの指導に努めてきた松本氏は「以前からリンカーズの手法を評価してきたが、今回は同社と一緒になってこの動きを普及させていきたい。
日本は最近では、欧米企業に技術開発で後れを取ってきたが、外部企業の技術を活用するオープンイノベーションを使えば、自分たちだけでは成し遂げられなかった課題解決や新しい価値の創造ができる。日本企業がまだ競争力を発揮できるチャンスは十分ある」と指摘、日本全体にこうした連携が広がり、製品の開発力がレベルアップすることを期待している。
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