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2021年2月21日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 米国のペンシルベニア大学が発表した世界有力シンクタンク評価報告書で、日本国際問題研究所(佐々江賢一郎理事長)がその国際的な活動が評価されて世界トップのシンクタンク賞に当たる「シンクタンク・オブ・ザ・イヤー2020」に選ばれた。アジアのシンクタンクの受賞は初めてで、佐々江理事長に日本国際問題研究所(以下、国問研)の活動状況と今後について聞いた。

ペンシルベニア大学(f11photo/gettyimages)

――「シンクタンク・オブ・ザ・イヤー2020」というのはどういう賞なのか。

佐々江理事長 世界各国のおよそ7500のシンクタンクやメディア、民間、政府担当者へのアンケートなどをもとに、ペンシルベニア大学ローダー研究所のパネルで審査して選出されるもので、「シンクタンク・オブ・ザ・イヤー」は年間特別賞だ。

――そもそもシンクタンクは米国ではどのように機能しているのか。

佐々江理事長 米国のシンクタンクについてはいくつかの特徴があるが、主に3点説明したい。第1点は、米国のシンクタンクは政策提言や発信機能を重視している。学問的な研 究のみでなく、直面する政策課題にどのように対応すべきかについて、政府、軍、経済界などの関係者と意見交換を緊密に行い、情報を得て、それを検証しながら様々な提言を行っている。シンクタンクのメンバー自体も、いわゆる「回転ドア」で政府の役職を経験した人材も多い。

 トランプ政権の下では、ワシントンのシンクタンクの多くがトランプ大統領を批判し、政権との連携が機能しなかったという特殊な状況にあった。これが一時的な現象であるのか、あるいは米政治社会が分断し保守とリベラルの乖離が激しい状況を反映して、政策提言の収れんが難しい状況が継続するのかはわからない。

 2点目は、政策提言の発信力と集客力。米国のシンクタンクは米国内外への発信力を重視し、他の機関や他国のシンクタンクとの合同でプログラムや会合を実施することも頻繁に行っている。このため、世界のシンクタンクの間の議論でも米がリードすることが多い。

 第3は、財政基盤であり、特に日本と大きく異なるのは、民間の出資による大きな資金を有していること。

――どういう理由で、ペンシルベニア大学ローダー研究所がシンクタンクを評価するようになっているのか。

佐々江理事長 ペンシルバニア大学ローダー研究所のシンクタンク・市民社会プログラム(TTCSP)の説明によれば、1989年の設立以来、TTCSPは、シンクタンクの傾向や、市民社会のアクターとしてシンクタンクが政策形成過程において果たす役割に関するデータの収集と研究の実施に取り組んできた。

 こうした実績を踏まえて、2006年には、世界の全地域で、公共政策研究の全ての主要分野の中核的研究拠点を特定し評価することを目指し、シンクタンクの国際指標というパイロット・プロジェクトを策定し発表した。この指標の策定にともなって、同年からシンクタンクの評価を開始したものと承知している。なお、TTCSPでは、06年以降も評価の仕方について一層改善するため、随時変更を行ってきている。

――過去にどのようなシンクタンク、機関が評価されてきたのか。

佐々江理事長 今回国問研が受賞した「シンクタンク・オブ・ザ・イヤー」は、14年以降では、米国のブルッキングス研究所が計4回(2014、15、17、18)、英国のチャタム・ハウスが1回(2016)、米国のカーネギー国際平和基金が1回(2019)受賞している。国問研は、これまで日本及びアジアのシンクタンクでは常にトップの評価を得てきている。世界ランキングでは、ほぼ一貫して10位台前半(10位~15位の間)で、今回初めて8位となって一桁の評価を得た。

――国問研のどういう活動が評されたと思うか。

佐々江理事長 私が理事長になってからこの数年は、世界に向けて発信力を強化した。発信力は機能と内容の両面があるが、デジタル化が必ずしも十分ではなかったので、ホームページ上で発信し、SNSなどにも力を入れた。内容に関しては、外交、安全保障だけでなく、多様な分野での研究のリポートを出してきた。特に力を入れたのは、研究所内だけのリポートではなく、外部に向かって一般の人にも分かりやすい形でマスコミが追っているようなカレントなトピックについて分析、提言したものを、タイムリーに戦略コメントという形で出そうと心掛けた。これをなるべく英語を含めた形で海外に出すために相当に力を入れた。また日常的に行っている研究会の立派なリポートがあっても、うずもれていたので、外に発信しようとした。こうしたことを通じて、国問研の存在が専門家の間だけでなく、より多くの人に知られるようになった。

 世間の人に分かりやすい形で紹介するための会合であるイベントについては、世界の主要な識者などを多数集めて公開で議論を行う「東京グローバル・ダイアログ」(TGD)を19年末に行った。また、過去1年間に起きた主要な出来事についての「戦略年次報告」も19年末から和英文双方で出した。今年も2月初めに「戦略年次報告2020」を「インド太平洋の今日と明日:戦略環境の変容と国際社会の対応」というテーマで出し、また2月下旬に第2回目のTGDも行われる。

 毎年G20の会議が開催されるときには、その前に世界のシンクタンクが集まる「T20(シンクタンク20)」が開催される。19年に大阪でG20が開かれた時には、その前にアジア開発銀行研究所(ADBI)や国際通貨研究所と協力して「T20」を開いた。こうした場にはペン大のローダー研究所の人も来ていた。この賞をいただけたのは、この1、2年の国問研のこうした仕事の中身に注目すべき点があったと、審査する側が評価した結果ではないか。世界のシンクタンクとの関係を深めたことで、ビジビリティが上がって目に留まる機会が増えた点もあるのではないか。

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