2024年4月26日(金)

Wedge REPORT

2021年2月21日

コロナ禍でのシンクタンクとは

――コロナ禍の時代で、シンクタンクの基本的なあり方は。

佐々江理事長 コロナがどういうインパクトを与えるのかは、世界の研究機関の共通の関心事項だ。各国が協力してこれをどう乗り切るか、国際的な協力の議論をすべきで、日本は外交でどうしたらいいのか、日本の発信する力はまだ十分ではない。コロナ以外でも、中長期的な大きな方向性と問題点を明確にして、何をすべきかの政策提言を行うことで、それを世の中の人にこれまで以上に分かりやすく発信していくべきだと思う。

――コロナ以外ではどういったテーマに取り組んでいく考えか。

佐々江理事長 気候変動、SDGs(持続可能な開発目標)などは従来型の戦略的なテーマには入っていなかったが、政治や外交にも反映してくる。当研究所ではこうしたテーマについても研究をしているが、さらにそのインパクトについて研究する必要がある。それに加えて、新しい大統領が誕生した米国でコロナが内政上でどういう影響を与えるのか、大国となった中国のガバナンスの在り方が政治や安全保障の関係にどう影響するのかの研究も深めるべきだ。

――国問研の研究員の国籍を見ると、大半が日本人で、もう少し国籍を多様化した方が良いのではないか。

佐々江理事長 国際問題に関する研究員の質を高め、多角的な観点から研究をするという意味で、研究員の国籍はバラエティに富んだ方が良い。能力があり信頼できる研究者であれば、日本人でなくてもよい。政府から委託された研究はしているが、公務員ではないので国籍要件は必要ない。日本に在住はしていないが、アソーシエイツという形でフランス、インド、カナダ、豪州の研究員もいるが、研究所の基盤を強化しながら様子を見て、こうした海外の国籍の研究員を増やすことも視野に入れていく。

――国問研は政府関係の仕事をどの程度されているのか。

佐々江理事長 政府が研究、分析を委託したテーマを、研究機関などが競争入札に参加して、我々が応札できたテーマについて仕事をしている。政府に対して情報を提供するというよりも、中長期的な視点からの分析や、こうした方が良いという提言をする場合が多い。今後も積極的にこうした仕事は受けていきたい。その提言が政府によって実行されれば、研究所としての存在意義にもつながる。

――今後の新しいテーマとしてはどういう問題に取り組もうとされるか。

佐々江理事長 まずは研究所としての足腰を強くしたい。そうしないと、新しいことに取り組むのも難しくなるので、民間や政府からの支援をお願いしたい。取り組み強化の必要があるテーマは、コロナ、気候変動、ハイテクがある。コロナはこれまでもいくつか行ってきたが、引き続き深掘りしていきたい。気候変動もグローバルな大きなテーマなので戦略的視点から取り組みたい。ハイテクは安全保障や経済活動と絡んでくるので、大きな戦略的課題になってきている。

 また、今後は若い人たちの研究者としての育成にも力を入れ、大学の研究者などにも研究の機会を与えていきたい。また、日本は女性の研究者が相対的に少ないので、女性を増やすように意図的に取り組む必要があると感じている。

ささえ・けんいちろう 1974年外務省入省、2002年経済局長、05年アジア太平洋局長、10年外務事務次官を経て、12年から駐米大使、18年6月から日本国際問題研究所理事長。69歳。岡山県出身。

  
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