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2021年3月3日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 この10年間にガソリンスタンドの数が半分以上も減少して厳しい経営を強いられているガソリンスタンドを経営する企業(「ガソリンスタンド特約店」)を相次いでV字回復させる再生請負人がいる。出光興産に勤務していた石原尚幸・経営コンサルタント(47歳)がそうで、2008年に出光を退社し、中小企業の事業継承などの経営相談を受けながら、「成長と持続の両立」を目標に、ガソリンスタンド特約店などの業績を着実に好転させてきている。

ヤブサキ産業GS

35歳で独立し自分を試す

 石原氏は34歳になった時に、営業成績が優秀だったことから出光では将来は出世するポジションにいたという。しかし、このまま大きな組織の中で仕事をしていくのも楽しいが、卸売業を営んでいた父が「独立するなら35歳まで」と言っていた言葉通りの35歳になって、自分の力を世に問うてみたいと考えるになったという。会社組織の中で出世するよりも自分の力量を試してみたくなった。

 退職後にコンサルタント業をスタート、「当初はスポットのみ(相続対策、資金繰り、ビジョンづくり)の仕事が多かったが、代替わりに際し『中期の経営計画を作りたい、停滞する会社を活性化させるのを中に入って一緒に手伝ってほしい』といったオファーを受けるようになった。そのうち、継続的にかかわる必要性があることから、顧問としていくつかの会社の経営相談を引き受けるようになった」という。

 最初のうちは出光にいたころのガソリンスタンド特約店とのつながりで、経営で苦戦している会社の相談に乗った。しかし、ガソリンスタンドを取り巻く経営環境は逆風になってきており、給油所の数はこの10年間に約6万カ所あったのが3万以下にまで大幅に減少、石油価格の低下や車の低燃費化、若者の車離れなどにより、燃料油の需要や粗利益率の低下が目立ち、石油に依存している会社のジリ貧ぶりが顕著になっていた。

 業界では「2030年問題」と呼ばれている構造的な問題が指摘され、ガソリンスタンドのさらなる整理統合が進むのは必至とみられており、これを乗り切るための経営戦略が注目されている。

中長期的な視点で面倒を見る

 石原氏が経営アドバイスしている2つのガソリンスタンド特約店の事例を見てみよう。一つは千葉県の北西部を中心に15カ所の出光系のガソリンスタンドと車関連事業を展開しているヤブサキ産業(本社・市川市、薮嵜康一社長)。薮嵜社長は2012年に父親の跡を継いで、40歳で社長に就任した。社長になる前は会社の財務状態も良くなく、収益性も低かったので、中長期の成長戦略をどのように描こうかと迷っていた時に石原氏から指導してもらったのが最初だった。

 「まずは会社の理念、ビジョンなど根幹的なものを一緒に作り、足元の戦略を具体化していった。私一人だと、会社を客観的に見ることが難しいが、石原氏は冷静な目で現状と将来を見てくれている。目標数字の実現にはうるさく、しつこいなと思うこともあるが、それだけ本気で指導してもらっている。

 事業内容で最も大きな変化は、油以外の仕事が増えたことで、20年前は利益のうち油関連が7割を占めていたが、いまは3割ほどしかなく、将来的には1割くらいまで減らさないと生き残れない。

 この石油以外のビジネスに転換ができなかったところが潰れていっている。その代わりに、車検、保険の販売、レンタカー事業など油以外のビジネスを増やしてきた。これを担ってくれているのが女性社員で、3年前と比較して3倍の17人に増えて会社の活性化の一因になっている」

 と話す。また、人事考課など制度面をの見直しや採用専用ホームページ・YouTubeチャンネルの開設をしてきたことで、5年前からは大卒新卒者が入社するようになったという。しかし中には数年で転職した人もいたそうで、人事や職場環境のさらなる改善に取り組んでいきたいという。

 将来の目標について薮嵜社長は「町医者以上の身近な存在になってカーライフのサポートをしていきたい。今後は新車の販売を増やすなど新たな領域に挑戦することで、現在の年間売上約60億円を100億円に増やして利益を5億円にしたい。従業員が現在70人を100人にまで増員し、石油販売業界の中で千葉県ナンバーワンの競争力をもつ企業になる」を掲げている。

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