使えない上司・使えない部下

2021年3月4日

»著者プロフィール

障がい者は絶対になくてはならない存在

岡山弘美さん

 始めの2年間を振り返ると、私自身にも思い込みがあったのだろうと思います。結果として、係員への対応が間違っていたこともありました。そのような経験もあり、最近は講演で「(障がい者の職場)支援者にこそ、何らかの問題がある」とよく話します。支援者の方の中には、「上手くいかない時は、障がい者の側に問題がある」と言う人がいるのです。

 私の経験をもとに言えば、支援者が障がい者と同じ立場で連携をとっていたら障がい者は困らないものです。その時点において「同じ立場での連携」が十分にできていないから、障がい者にたちまち迷惑がかかるのです。

 例えば、最近、起きた問題があります。係員の皆さんで待合室を掃除していました。私がそこへ行くと、2つの椅子を同時並行で急いで拭いていたのです。以前、私は「椅子を1つずつ丁寧に拭いてほしい」と頼んでいました。障がい者の方のよいところの1つは仕事が丁寧なところですから、そのようにお願いをしていたのです。

 支援者から、2つの椅子を同時並行で拭くことを教わったようでした。その後、私の方からは「この掃除の仕方は良く言えば合理的。悪く言えばいい加減に見えます。以前よりも、大雑把になっていませんか?」と支援者にお伝えしました。

 そのうえで、「あなたを責めるつもりはありません。きちんとあなたに伝えなかった、現場責任者の私に非があります」と話しました。この後、私も現場に入り、皆さんと仕事をするようにしたのです。

 障がい者を雇う会社や職場は、その方ができないことばかりを探す傾向があるようです。係員ができることを探して、それをしてもらうようにお願いしています。私は、皆さんが働く病院の看護部長や副部長とは常に綿密な話をします。係員は絶対になくてはならない存在ですから、病院と連携し、働きやすい環境を作りたいのです。ここでは、今や全員が完全な戦力になっています。

 仕事でわからないことを「わかりません」と言える人がチームの中で認められることが多いのです。「できません」と言える勇気を持つ人が評価されるようになります。障がい者の方の中には、「はい、できます」と答える人が少なくありません。話を伺うと、前の職場では「わかりません」「できません」とはなかなか言えなかったようです。「わかりません」と言うと、叱られる場合もあったそうです。本来、「わからない」「できない」時にどうすればいいのかと考えるのが支援者であり、私たちの責任です。

 普段、同じ目線で柔軟性をもって皆さんと接しています。問題があった時には厳しくなる場合があります。怖い上司に変身します。係員の皆さんと一緒に仕事をするうえで特に気をつけているのは、「任せる」「認める」「感謝する」の3つです。

 「任せる」は仕事をお願いしたら、それができるところまでは任せる。もちろん、いきなり任すことはしません。きちんと丁寧に何度も教えます。「認める」は、尊重すること。「感謝する」は、例えば「ありがとうございます」「ごめんなさい」と必ず言うこと。これらは、絶対に大事だと思っています。自分が頼りにされている、大事にされているとわかると、より一層に一生懸命に取り組みます。

障がい者雇用に関わることで、自分を変わることができた

 私は「使える、使えない」といった言葉は使いませんが、強く印象に残っている上司はいます。園長をしていた頃、その保育園を監督する大学(奈良県立医科大学)の課長です。当時50代で、男性の方でした。例えば、同じ園の保育士の方が私を飛び越えて、仕事の不満を課長に伝えたことがありました。課長は私を呼んで「残念なお話がありますが…」と切り出すのです。そして、事情を聞いた後で注意をしてくれました。

 反論? いいえ、そんなことはしません。課長にも、その保育士にも逆恨みするなんて、ありません。課長は包み隠さず、誠実にそのまま話してくださるので、ありがたかったです。当時の私は、少々強引なところがあったのかもしれません。課長は、私にとても厳しかったです。必要がある場合は、きつく叱ります。振り返ってみると、部下である私を育てようといった愛情があったような気がします。

 園長の私に不満を言うことなく、課長のもとへ話を持って行った保育士に思うことは多少ありました。悔しい思いもあります。私は間違ってはいないと思っていましたから…。当時は「誰かが、いつかはわかってくれる」と信じていました。それが、課長だったのかもしれません。課長やその上の方(理事)が、私をここに招いてくださったのだと後々に聞きました。

 課長が、私を評価していないならばあのまま園長をしていたはずです。もう、今頃は退職していたのかもしれません。おこがましいのかもしれませんが、課長は私のことをある程度評価していてくれたのかもしれない、と思います。その意味でも、印象に残っている上司です。

 園長の頃よりも、今は性格や人あたりが柔らかくなっていると思います。係員の皆さんと働くようになり、いろんなことを学びました。優しい自分と出会うこともできたのです。保育園で園長として働き続けていたら、このようにはなれなかったのかもしれません。障害者雇用に関わることで、自分を変わることができたのです。皆さんには、感謝しています。

奈良県立医科大学附属病院

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る