アマゾン独自の人材獲得術
どんなにユニークな仕組みがあっても、それを運用するのは結局は人である。優秀な人材を採用し続けることも会社が成長するうえで欠かせない要素だ。急成長をとげてきたアマゾンでは、1997年当時で600人だった従業員数が、2020年に100万人に迫った。本書はアマゾン独自のリクルート術も詳しく解説している。
面接を担当する人の個人的な感情やバイアスが採用の可否に影響しないよう、採用プロセスが定型化されている。書類選考や電話でのインタビューで絞り込み面接をする。通常は5~7人がそれぞれ面接を行う。面接を担当する人はかならずアマゾン社内で面接に関する研修を受け、独自のインタビュー手法を身に着ける。特に、「あなたの経歴について概略を教えてください」といった漠然とした質問はしないことになっている。おうおうにして候補者の自慢話に終わるからだ。
また、相手の発想力などを試す質問もしない。会社を設立して間もない時期は、創業者のジェフ・ベゾスが自ら採用面接にあたり、「ロサンゼルス空港の年間利用客数は?」「マンホールの蓋はなぜ丸いのか?」といった奇抜な質問をしていた。たしかに、こうした面接をすると知能レベルが高く有名大学を出た人材を選抜できる。しかし、そうした人材が必ずしも会社の中で活躍できるわけではないことが分かり、いわゆる頭の良さを試す質問は今はしない。
一方で、これまでのキャリアのなかで、自分が置かれた具体的なシチュエーション、その時の担当業務、問題にどう対応し、どういう結果になったかという質問をする。面接官は質疑のやりとりを、ほぼ逐語で記録した書類を作成し、他の面接官たちと記録を持ち寄り客観的に面接の内容を検討し採否を決定する。採用プロセスでも、ちゃんとした書面をもとに会議をする段取りになっている。
意外にも、アマゾンでは給料は高くない。むしろ他のIT関連企業に比べかなり低かったという。本書の筆者たちが在籍していた2000年代当時で、米国のシアトル本社の従業員の給料の最高額は年16万ドルだったという。ボーナスもなかった。社内で昇進したら自社株が付与され、会社が長期的に成長を続け株価が上がらないと従業員も豊かになれない仕組みになっている。