失敗を許容するカルチャーあってこそのアマゾン
本書ではこのほか、新規事業を担当するプロジェクト・チームの編成のしかたなど、アマゾンで実際に導入している手法の実例が豊富だ。その多くはどの会社でもそのまま実践できるものだ。興味はつきない。
しかし、そうしたアマゾン流を日本企業が形だけ真似てもビジネスの成功が約束されるわけではないだろう。やはり経営者の意識改革がまずは大切ではないだろうか。本書に出てくるアマゾンの創業者ジェフ・ベゾスの言葉を最後に紹介したい。先を見通せない不確実性と向き合い失敗を恐れないベンチャー精神がよく表れている。失敗を許容するカルチャーあってこそのアマゾンなのだ。
Jeff often used an analogy in those days when describing our efforts to innovate and build new businesses. “We need to plant many seeds,” he would say, “because we don't know which one of those seeds will grow into a mighty oak.”
「新しい事業を考え出し立ち上げる取り組みについて、ジェフは当時よく、次のような例え話をつかっていた。『たくさんの種をまかなければいけない。どの種が大きな木に育つか分からないからね』」
もうひとつ、次の言葉も印象的だ。
“I believe we are the best place in the world to fail (we have plenty of practice!), and failure and invention are inseparable twins. To invent you have to experiment, and if you know in advance that it's going to work, it's not an experiment. Most large organizations embrace the idea of invention, but are not willing to suffer the string of failed experiments necessary to get there.”
「わが社は失敗に最も寛容な会社だ(実例はたくさんある!)。おまけに、失敗と発明は不可分な双子だ。新たなものを創造するには試してみないといけない。事前にうまくいくとわかっていたら、それは実験ではない。多くの大企業は新たな創造を追求する一方で、結果を出すために不可欠な失敗の数々を受け止めるのをいやがる」
ベゾスはアマゾンのCEO(最高経営責任者)を年内に退任する予定だ。ベゾスが経営の第一線から身を退いたあとも、アマゾン流の事業運営がうまくいくのかどうか。アマゾンから目が離せない。
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