米国の対中政策は包括的かつ機敏で粘り強いものでなければならないが、その中で不変であるべきなのは、中国周辺の国際水域を「北京湖」にしてはならない、ということだ、と論じています。
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日本人が尖閣に関して抱く危機意識は、ワシントンで、ましてや欧州では、さしたる共感を呼んでいません。そして、尖閣問題が単に日中ナショナリズムの対立、ないし歴史問題に由来するかに捉えられ、南シナ海の紛争と切り離して論じられる傾向にあります。
そうした中で、ボルトンの所説に、初めて溜飲の下がるものを認めることができます。第一に、ボルトンは、東シナ海と南シナ海を“the East and South China Seas”と表現し、両者を一体と見たうえ、双方において中国が示す拡大意欲に違いを認めません。第二に、「中国の端的な巨大さ、存在感が、辺りを払う状況を防がねばならない」と明確に言い切っています。
日本を含む近隣諸国は、まさしく中国の圧倒的存在感に脅威を認めているのです。ここをワシントンの知識層は実感をもって受けとめることができず、自分たちにほとんど関係のない遠い場所での瑣末ないざこざとしか受けとめられない、というボルトンの指摘には、なるほど、やはりそんなものかと思わされます。
そのような態度は捨てるべきで、次の大統領が誰であれ、とらねばならない策のカギとなるのは、力と覚悟である、というボルトンの論は、極めて明快かつ適切です。中国に通じる言語は力、そして力を支える気骨だけだということをよく見抜いています。
ボルトンは、「中国周辺の国際海域を、北京の湖にしてはならない」という一線を、米国は今後の原則とすべしと、論説を締めくくっていますが、当然、日本もこの認識に立って対中戦略を構築しなければなりません。この、ボルトンの歯切れのよい議論は、ワシントンの知識層だけでなく、日本としても心して傾聴すべきものと言えるでしょう。
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