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2021年4月15日

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出井康博 (いでい・やすひろ)

ジャーナリスト

1965年、岡山県に生まれる。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒業。英字紙「ニッケイ・ウイークリー」記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)客員研究員を経て、フリー。著書には、『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)、『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『黒人に最も愛され、FBIに最も恐れられた日本人』(講談社+α文庫)などがある。

留学生が留学生労働者になると2倍になる理由

 留学生の就労実態を見るうえで、興味深い統計資料がある。厚生労働省が毎年発表している「『外国人雇用状況』の届出状況」だ。国内の外国人労働者数が在留資格別などに示されたデータで、大手紙も発表直後に決まって報じる。

 このデータによれば、昨年10月末時点で、12万7512人のベトナム人留学生が「労働者」として働いている。一方、法務省出入国在留管理庁の「在留外国人統計」では、ベトナム人留学生は同年12月末時点で6万5653人に過ぎない。つまり、実際の数の1.94倍ものベトナム人留学生が、労働者として存在している。

 2つのデータには、調査時期に2カ月の開きがある。とはいえ、その間、留学生を含め在日ベトナム人は、コロナ禍の影響でほとんど帰国できていない。にもかかわらず、なぜ実際の2倍近いベトナム人留学生が、日本で働いていることになっているのか。

 厚労省のデータは、外国人を雇用した事業所がハローワークに届け出た数だ。1人の外国人がダブルワークしていれば労働者は「2人」、トリプルワークの場合は「3人」と数えられる。同データのベトナム人留学生が実数をはるかに上回るのは、1人平均「1.94」のアルバイトをしているからなのだ。確かに、私が取材してきた留学生たちも、当たり前のように2つ、3つのアルバイトをかけ持ちしていた。

 もちろん、1 つのバイトが短時間の場合も考えられる。だが、留学生は通常、1つのアルバイトで「週28時間以内」の制限近く働く。従って複数のアルバイトをかけ持ちすれば、当然、法定上限を超えてしまうことになる。

 ベトナム人に次いで、30万人計画のもと急増したのがネパール人留学生だ。ネパール人もまた、実際の留学生の1.91倍が仕事に就いている。ベトナム人と同様、1人の留学生が平均2つ近いアルバイトをしているのだ。ちなみに、中国人留学生は12万5328人に対し、就労者は7万9677人に過ぎない。アメリカ人留学生も1581人のうち、働いているのは464人だ。

 裕福で、母国からの仕送りが見込める中国人やアメリカ人とは違い、ベトナムやネパール出身の留学生は、多くがアルバイトをかけ持ちし、何とか日本での生活を維持している。そのことは、厚労省のデータからも明らかだ。そんな留学生たちを今、コロナ禍が襲っている。

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