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2021年4月15日

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出井康博 (いでい・やすひろ)

ジャーナリスト

1965年、岡山県に生まれる。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒業。英字紙「ニッケイ・ウイークリー」記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)客員研究員を経て、フリー。著書には、『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)、『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『黒人に最も愛され、FBIに最も恐れられた日本人』(講談社+α文庫)などがある。

技能実習生よりも悲惨な留学生

 筆者の取材先であるベトナム人留学生の1人が働く北関東の食品関連工場で、昨年暮れに新型コロナのクラスターが発生した。感染者は大半がアルバイトの留学生で、夜勤に向かう人材派遣会社の送迎バスなどで感染が広まった。格安弁当や惣菜などを製造する工場での夜勤は、出稼ぎ目的の留学生にとっては典型的なバイトの1つだ。

 工場はしばらく操業を停止した後、再び稼働した。しかし、留学生たちは感染者以外も全員がバイトを失った。工場側が「留学生は感染リスクが高い」と判断し、解雇したようなのだ。

 事実、感染リスクと隣り合わせの“密”な生活を送る留学生は多い。日本語学校の留学生寮では、1部屋に数人が詰め込んでいるケースがよくある。大手メディアは実習生に対する「人権侵害」を頻繁に報じるが、就労環境、住環境とも留学生よりずっとマシだ。実習生の場合、雇用主が用意する住居には「1部屋2人以下」しか住めないよう法律で定めてある。だが、留学生には規定がなく、タコ部屋状態での生活を強いられる。そして相場以上の家賃まで学校に徴収されることも多い。

 民間のアパートに暮らす留学生たちも、節約のため、たいてい複数で部屋をシェアする。だからバイト先などで新型コロナに感染すると、寮やアパートで「家庭内感染」が広まりやすい。

 新型コロナの影響で、仕事を失う留学生が増えている。バイトがなくなった途端、彼らの生活は行き詰まる。日本語学校の学費の支払いもできない。すると学校側から、退学処分を言い渡される。

 学校としては、留学生に不法残留されては困る。不法残留者を多く出せば、入管当局から目をつけられ、新規の留学生受け入れが不利となるからだ。それを避けるため、学校は学費の支払いなどで問題のある留学生は、母国へ送り返そうとする。

 そんな事情を留学生もわかっているので、学費が払えないと悟った時点で学校から逃げる。借金を抱えたまま帰国すれば、家族は丸ごと破産だ。だから不法残留しても、日本で働き続けようとする。留学ビザで来日後、不法残留している外国人は、昨年末時点で5000人を超えている。バイトを失い、困窮する留学生が急増している現状からして、その数は今後増えていく可能性が高い。追い込まれた末、犯罪に手を染める者も現れるかもしれない。

 だが、彼らだけを責めることは酷である。学費稼ぎのため、また低賃金の労働者として、留学生を利用してきた日本側の責任は大きい、

 やがてコロナ禍は収束する。その前に、政府には「留学生30万人計画」の是非を総括してもらいたい。本来の留学ビザ発給の基準に沿い、出稼ぎ目的で、多額の借金を背負った外国人までも「留学生」として受け入れてはならない。労働力を欲するならば、正直に「労働者」として迎え入れるべきである。

  
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