2023年1月31日(火)

オトナの教養 週末の一冊

2012年10月25日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

 共和党は、減税や財政規律を求める経済保守、人工妊娠中絶や同性婚に反対する宗教保守、そしてネオコンなどの軍事保守がいます。利害は完全に一致しません。軍事力で民主主義を広めていくネオコン的な理想主義は、コストがかかり過ぎて「小さな政府」と一致しない。

 リバタリアニズム(完全自由主義)で、自由を煮詰めて行くのもそうです。経済リバタリアニズムは、歳出削減、減税路線で、保守陣営内で一致しやすいと思いきや、麻薬も個人の自由、人工妊娠中絶も州の判断次第でいいという社会リバタリアニズムは、宗教保守の道徳規準と激しくぶつかります。保守派にも同性愛者がいますが、多くはリバタリアンです。

——そうした共和党の保守の分裂に対し、民主党内のリベラルの分裂とは?

2008年アイオワ党員集会につめかけた民主党支持者 中西部の農村でもイラク撤退論が吹き荒れた (撮影:渡辺氏)

渡辺氏:民主党は、労組などのブルーカラー層を基盤とした経済リベラル層が所得の再配分と雇用の安定を求めますが、ニューポリティクス派という高学歴・高所得の文化リベラル層が、環境や人権などに熱心で、やはり分裂しています。知識人や主流メディア、ハリウッド関係者は、文化リベラルが多いです。ニューデール政策と公民権運動で民主党の基礎票になったアフリカ系と新しいマイノリティであるアジア系、ヒスパニック系などのエスニック集団の利益配分をめぐる緊張もあります。

 労働者層の人たちや農村の人たちは、民主党支持でも、教会に熱心に通ったり、銃を愛好していたり、きわめて愛国的でもあり、必ずしも反戦的ではありません。ライフル協会の会員もいます。反格差の経済ポピュリズムと反戦平和が直線的に一致していない点で、日本の左派とは違います。

 2008年大統領選挙は、イラク撤退論一色でした。しかし、米兵の犠牲が増え、経済に不満が募り、アメリカの世界での悪評が高まったからで、必ずしも平和主義からイラク撤退論が民主党の労働者層で盛り上がったわけではありません。同じイラク撤退論でも、反戦リベラル派とは理由が違います。

 「大きな政府」では合意があるのですが、経済リベラル層が格差是正や雇用の安定などに関心がある一方、文化リベラルの関心事は反戦とか、環境保護とか消費者運動です。高学歴でワインやスターバックスの珈琲を飲んでいる、マンハッタンとかサンフランシスコとか都市部のリベラルのイメージです。

 かつて『見えないアメリカ』(講談社現代新書)でもこのあたりは書きましたが、本書では保守との対比で描きました。また、本土とハワイという対比の目線も持ち込みました。同じ民主党の日系人でも、ハワイ系と本土系では政治姿勢や性質がまったく違うわけです。

――「分裂」というキーワードを考えた理由は何でしょうか?

渡辺氏:1960年代、1970年代以降、ヴェトナム反戦運動の影響で様々な市民運動が吹き出し、なかにはラディカルな左派も生まれました。それに対して伝統的で保守的なアメリカを取り戻したい宗教右派も台頭した。また、女性の性をめぐる問題にしてもフェミニズム運動が盛んな一方で、人工妊娠中絶を禁じる「プロライフ」の立場から、キリスト教の保守道徳が同じひとつの国に同居している。分裂と共存しています。


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