2024年4月20日(土)

Washington Files

2021年5月31日

従来の民主党政権の中道経済主義からの脱却

 ウォールストリート・ジャーナル紙はこうした動きについて、インフラ抑制を念頭に置いてきた従来の民主党政権の中道経済主義からの脱却を意味するものだとして、次のように論じている:

 「1990年代から2010年代に主役を演じてきた経済論者たちの実績は、功罪相半ばしたものだった。この残党グループの一人が、これまで財政出動に対し際立って慎重だったジャネット・イェレン女史だが、今や財務長官として“ビッグ思考go big thinking”に転じ、『経済に対する我々の理解は多くの面でシフトしてきた』と自らも認めている」

 「“新ケインズ主義者”とも評された当時の彼らの考えは、政府は景気後退と失業を沈静化させると同時に、過度のインフレと財政赤字拡大への警戒も怠らず、他方で経済的善行のパワーを阻害する政府規制を避ける、という中道思考だったが、それが最近、左寄りの一段と進歩的な思考に道を譲りつつあるのだ」

 「新思考の左派経済論者たちにしてみれば、アメリカは過去50年間、インフレというインフレを経験してきておらず、また、それを心配することもなく、低金利政策が続く現状では財政赤字拡大も気に留めていない。その結果として、大規模政府支出を伴うプログラムが次々に打ち出されてきた」

 「そして皮肉にも、これまで自由市場と小さな政府を唱導してきた共和党政治家たちまでが、新たに登場してきたよりポピュリズム的で、愛国主義的なブルーカラーそして反貿易主義の選挙民のご機嫌をうかがう諸政策を模索し始めている」

 このように、保守主義的立場をとるウォールストリート・ジャーナル紙も、今や党派を超え、景気拡大のために一定の財政出動の必要性を認めたかたちだ。

 さらに注目されるのは、2016年大統領選でトランプ候補を支持し当選に導いた中西部諸州「ラストベルト」(錆びついた工業地帯)の労働者階層までが、インフラなどへの大規模投資とその財源確保の手段としての法人税増税、富裕者税構想に賛同している点だ。

 先月半ば、共和党議員の全国組織「共和党議員全米委員会National Republican Congressional Committee(NRCC)」が実施したラストベルト諸州有権者を対象とした意識調査によると、バイデン大統領が発表した2兆3000億ドルに上るインフラ投資について、当初、賛否はほぼ分かれたが、「財源は企業増税と富裕者税をベースにする」との説明を受けたとたんに支持者が6ポイントも跳ね上がり、56%となった。

 これは明らかに、減税と「小さな政府」を指示してきた共和党主流の伝統と相反するものであり、今や党内は、賛否両論めぐり見解対立が露呈しつつあるとさえ伝えられる。


新着記事

»もっと見る