2024年11月24日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年10月31日

 中国が尖閣についてやっていることは、「国際法」秩序に対する挑戦です。領有に関する現行の国際法に代わって、「いずれが先にみつけたか」とか「帝国主義の成果は認めない」とかのプロパガンダを使っています。これに対して日本は、国連等公開の場で細かい法的議論を展開するのはもちろんですが、一般の広報にも、より力を注ぐべきでしょう。

 もし、尖閣問題がさらに先鋭化する場合は、次の事態が起こる可能性があります。

 ・新たな冷戦が、中米を軸に生ずる可能性。今回の紛争を通じて、中国側にはソ連的体質(政府と民間を区別できない。経済を政治的に動かす。等)が根強いことが明らかになりました。また、経済面でも、西側企業にとっての操業条件は悪化しています。

 ・尖閣を日本と中国で共同管理する案の浮上。一見良さそうな案ですが、これは大きなリスクを伴います。「尖閣を共同統治なら、歴史的経緯にかんがみて沖縄、そして南西諸島も」と、中国は、当然要求してくるでしょう。今回の反日デモのスローガンでは、沖縄奪回を呼びかけるものもありました。

 沖縄はもちろん、南西諸島も、日本及び米国の安全保障にとって、決定的な意味を持ちます。南西諸島があるために、中国海軍は西太平洋に出にくいのですが、もし、このコントロールを日米が失えば、西太平洋の安全は中国の胸先三寸にかかってしまいます。

 ・武力衝突に至る可能性。その場合、日本は、海上警備行動、防衛出動発令を迅速に行ない、現場の司令官に大きな裁量権を与えておくことが重要です。事前に、米国とも、充分な協議をしておくことも不可欠です。

 いずれにしても、あらゆる事態を想定して、日米間で協議しておくことが、最も肝要であり、それを勧めているのが、オースリンの論説だと言えます。

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