2022年12月4日(日)

韓国の「読み方」

2021年6月3日

»著者プロフィール
著者
閉じる

澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、元ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15~18年論説委員(朝鮮半島担当)。18年4月から外信部長。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、『韓国新大統領 文在寅とは何者か』(17年、祥伝社)、『新版 北朝鮮入門』(17年、東洋経済新報社、礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著)など。訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。

「古くさい中高年男性の党」イメージ脱却につながるか

 4月のソウル、釜山の両市長選はどちらも「国民の力」候補が勝利を収めた。ただ、事後の世論調査で「野党の政策がよかったから」などと回答した人は7%だけ。「与党がダメだったから」が61%、セクハラ疑惑で自殺・辞任した「前任市長への審判」が18%だった。

 この世論調査は選挙結果への評価も聞いた。「政権・与党に期待を残して警告した」と「政権・与党への期待を失い、背を向けた」のどちらだと思うかという設問に、回答はどちらも46%と真っ二つだった。

 野党は敵失で勝利を拾ったものの、政権におきゅうを据えただけと考える有権者が半分いるということだ。それなのに野党側には勘違いが広がった。昨年4月の総選挙での大敗後に中道シフトを進めてきていたのに、保守強硬派が復権して「先祖返り」するのではないかという情勢になってきたのだ。

 この頃、文在寅政権に批判的な保守派のベテラン政治記者に大統領選の見通しを聞くと、浮かない顔で「これで野党有利になったなどとは、とても言えない。まだ与党優位は変わっていない」と話していた。朴槿恵前大統領の弾劾で被った保守派のダメージは甚大で、まだまだ支持回復はできていないからだ。

 韓国世論は「保守3割、進歩3割、中道4割」と言われてきた。朴槿恵弾劾を受けて保守派の層が薄くなり、進歩派は勢力を伸ばしたと言われるが、最終的に中道層がキャスティングボートを握る構図は変わっていない。

 保守派の朝鮮日報は李氏善戦の背景について、「政権交代のためには国民の力の変化が必要だと考える野党支持者が李氏を押し上げた」というのが専門家や党関係者の分析だと伝えた。同じく保守派の東亜日報は社説で、「国民は今回の代表選を保守野党の刷新と変化を見極める試金石と見ている。泥仕合に終始した今までの党内選挙が再現されるようではいけない」とくぎを刺した。

 最終的に李氏が勝利するかは不透明だが、李氏の善戦が「古くさい中高年男性の党」というイメージからの脱却につながる可能性はある。9カ月後に迫る大統領選へ向けて野党側に勢いがつけば、今度は与党側も刺激を受けて変化せざるをえなくなるかもしれない。

 韓国政界の情勢変化はめまぐるしい。いまだ与野党とも誰が大統領候補になるのか全く見当のつかない状況なのだが、野党第1党の代表選は要注目である。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る