安定した大企業や公務員で一生その身を捧げるという概念がない
「学生の就活人気企業に関するアンケート結果は、マクロ視点で見ると過去30年間それほど大きく変わっていませんが、近年人気ランキングの常連であった大企業が、トップ10圏内から姿を消すケースもちらほらと見えてきていいます。その背景には、もちろん産業や企業の変化もありますが、一方、学生が大事にしている価値観や、応募動機が変化し始めていることが大きく関係がありそうです。実際、過去、安定就職の代名詞でもあった国家公務員も、今年も総受験者数が減少する形となりました。
今の学生は安定した大企業や公務員で一生その身を捧げるという概念がそもそもない傾向にあります。現時点での安定性や瞬間的な好待遇よりも、その会社や組織で得られる経験が、いかに自身の生涯年収にレバレッジを効かせる要素になるか? の方に興味を持ちます。いまは『若いうちから責任ある仕事を任せてもらえる』や『得られる経験が将来に活きそう』など、より本質的な理由が目立ちます。
大企業は人気がある傾向は変わりませんが、それだけではなく、そこで自分は何をするのかを大事にしていると思います。企業も、より自律した学生を獲得するために、ジョブ型採用制度やインターンシップの充実を試みようとしているのは、そういった背景もあるでしょう。また、彼らは多様性を重視する社会で育ってきた世代のため、従来型の画一的な考え方や選択肢より、様々な選択肢の中から自分らしく働けるかどうかを重視する傾向が強いです。以前の世代より、周囲から見え方やランキング等ではなく、自分自身の納得感を大事にしています。
そういう意味では、キャリアオーナーシップが高くなってきている世代と言えると思います。さらに、コロナ禍という点も踏まえると、『働き方の自由度』は、今後の仕事選びにおける新しい要素になるのではないでしょうか。
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