2000年の規制緩和で、路線の設定や増減便は原則として航空会社の経営判断に委ねられ、自由に設定できるようになったが、羽田、伊丹、成田、関西4空港については、「混雑空港」として国交相が路線を許可する仕組みとなっている。路線の既得権化を防ぎ、競争促進や地域路線の維持を図ることが狙いだ。
拡大画像表示
羽田の国内線発着枠は現在年間32万回。10年秋に第4滑走路が完成したことを受け、来年3月末から2万回増やして34万回に拡大する。新たに割り振られる1日あたり25便を、大手2社のほか、スカイマーク、北海道国際航空、スカイネットアジア航空、スターフライヤーの新興4社が奪い合う構図だ。
国交省は、配分基準を決める有識者による検討会を7月からスタートさせ、議論が続いている。大規模な配分の際に開催される有識者会議は、発着枠(スロット)にちなんで「スロット懇談会」と呼ばれ、航空各社には特別の意味を持つ。自社に少しでも有利な基準になるように「意見交換」と称して委員を直撃する姿は、政治家への「ご説明」に奔走する官僚顔負けの根回しぶりだ。
それもそのはず。航空各社にとって、ドル箱の羽田路線は、のどから手が出るほど欲しいプレミアム・フライトなのだ。羽田便の利用者は年間5500万人、国内旅客数の7割を占める。大手の場合、羽田便を1便飛ばせば年間20~30億円の収入になると言われている。
滑走路の新設や航空管制の見直しなど、発着枠を新たに獲得できるチャンスは限られている。しかも、今回は事実上最後の大規模な配分とみられているだけに、各社とも必死にならざるを得ない。
破綻は想定外
時代遅れの評価項目
仕掛けたのはANAだ。
「破綻事業者は、発着枠の配分を受ける資格がない」。6社の代表が配分に向けて自社アピールを繰り広げた8月の第2回会合で、ANAの清水信三上席執行役員はそう切り出した。名指しこそしなかったが、JALを念頭に置いていたのはあきらかだった。スカイネットアジア、北海道国際航空もANAに同調した。
航空行政で常にJALの後塵を拝してきたANAにしてみれば、積年の恨みを晴らしたい気持ちは強い。“ANAのDNA”である。もっとも、今回、JALへの「配分ゼロ」を訴えたのは、無理は承知でKO勝ちを宣言し、判定勝ちに持ち込む作戦といった感が強い。