借金棒引き、税金なし。法的整理で超優良企業に生まれ変わったJAL。政権の手がけた数少ない成功事例を守りたい民主党と、「企業努力で追いつける範囲を超えた格差」とのANAの恨み節を受け止めた自民党。さながら両党の“代理戦争”と化した、 30億円を稼ぎ出すプレミアム・フライト「羽田スロット(枠)」の配分やいかに。結局は旧来型の「ムラの論理」に沿った官のサジ加減で決着しそうだ。
「規模の拡大よりも収益性を重視した経営に努める」。2012年9月中間決算を発表した11月2日、日本航空(JAL)の植木義晴社長は、記者会見で表情を引き締めた。
10年1月の経営破綻から2年10カ月、業績をV字回復させたJALの快進撃が続いている。営業利益は1121億円と中間期としての過去最高益を更新した。
一方、全日本空輸(ANA)の中間期の営業利益は753億円と5割増益となったものの、JALに比べると見劣りする。13年3月期の最終利益予想は、ANAが400億円、JALが1400億円だ。
羽田1枠30億円
注目の「スロット懇」
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ANAがいかに健闘しようとも「焼け石に水」の状態だ。「企業努力で追いつける範囲を超えた格差が生じ、公正な競争を歪めている」。ANAの伊東信一郎社長は、巨額の公的資金注入と会社更生法の適用で復活したJALとの競争について、かねてより不平等論を展開している。
これに対し、JALは「法律にのっとって再建した。過剰支援による好業績と言われるが、支援を上回る構造改革の結果だ」と一歩も譲らず、両者の対立は、さながら「仁義なき戦い」の様相を呈している。
好業績にもかかわらず、会見で慎重な発言を続けた植木社長の胸中に去来したのは、ライバル伊東社長の渋い顔だったに違いない。
収益格差が拡大するにつれ、JAL再生の公平性を巡る議論が再び熱を帯びてきた。JALとANAがガチンコ対決する「秋の陣」として航空関係者の注目を集めているのが、羽田空港の発着枠配分である。