ワクチン接種の意義は大きい
また接種を済ませた人がブレイクスルー・インフェクション(再感染)することが米国などで報告されていることについては、「1万人に1人で再感染が起きているが、その多くは軽い症状で、再感染があってもワクチン接種の意義は非常に大きい」と強調した。
デルタ型と言われている変異ウイルスの感染拡大については「あと2週間後の8月初めになれば、首都圏はほとんどがこの変異ウイルスに置き換わるだろう」と予測した。しかし、「だからといって、強弱はあるがワクチン接種の効果がなくなるということはない」と断言した。
新型コロナの治療薬については「新しい動きが出てきている。抗ウイルス薬、抗サイトカインストーム薬などが出てきており、治療の方向性が見えている。将来的には風邪の飲み薬となるような治療薬にしなければならない」と述べた。その上で「ワクチン接種と、軽症、中等症患者向けの点滴で行う抗体カクテル療法が広がってくれば、秋以降にはいまほどの危機感を持たなくてよくなる」との見通しを示した。
大会を理由に対策を後回してはならない
オリンピックについては「開催に潜むリスクがある。無観客にしても、競技場の外ではお祭り気分になり人の流れが増える。『オリンピックだからいいじゃないか』といった矛盾したメッセージにより、感染に対して無関心、非協力が増幅されるリスクがある。大事なことは、オリンピック大会中だからと言って、強化しなければならない対策を後回しにすることはあってはならない。その時が来たら対策は取るという決意が重要だ」と強調した。
感染者数が増える中で、専門家はオリンピック開催の中断をなぜ政府に対して提言できなかったのかという質問に対しては「(政府の感染症対策分科会の)尾身茂会長も指摘されているように、専門家はオリンピックの開催を決める立場にはない。政府が開催を決めたことで、いかに感染拡大を防ぐ方法を提言するのが我々の務めで、早め早めの対策を躊躇なく打ち出すべきだ」と指摘した。