2022年12月4日(日)

家電口論

2021年7月31日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

1961年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒、同理工学研究科修了。大手メーカーにて商品開発・企画を担当後、独立。現在、商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。

譲れないところを明確にしろ

 コンセプトが決まったら製品ができるのか? というと違いますね。コンセプトを仕様に落とす、数値化しなければ、いけません。そこでは、いろいろな要素がせめぎ合います。コンセプトを最大限に実現させるには、どこが妥協して良いのか、妥協できないかを決めなければなりません。ここまで決まった仕様が広宣(広告宣伝)での謳い文句にもなります。

 シロカでは、すばやきの場合「譲れない七ヶ条」として、七つに絞ったそうです。そして、もう一つ。シロカは研究部門を持ちません。このため、この七ヶ条は「誰でもできること」に集約させたそうです。今ない技術を外部から買って使うとした場合、スケジュールを組むことができません。このため、「特別なことをしない」ようにしたそうです。

 例えばバルミューダは5ccの専用カップで焼く前に水を供給する必要があります。この「小さな専用カップ」「毎回の水補給」などは特別です。しかしカップが見当たらなかったらどうでしょうか? 朝の忙しい時期などにはありそうなパターンです。

 特異なことをすると、特別感が際立つのですが、その実、結構な面倒くさいことをユーザーに強いているところがあります。初めは良いのですが、だんだん面倒くささが強くなります。逆にオーソドックスな使い方なのに、今までと全く違う結果が得られる。こちらは、じわっと効いてきます。使えば使うほどプラス感が出てきます。

 新しい技術を入れないと書きましたが、それは卓上計算で全てまとめられるというわけではありません。今回の七ヶ条の中に「庫内は広く」があります。すばやくトーストを「美味しく、ムラなく焼く」には、近接の方がコントロールしやすい。海外でトーストは基本ポップアップ・トースターが使われる所以です。「庫内は広く」と「美味しく、ムラなく焼く」というのは、矛盾するニーズです。このためにはファンの位置、反射板の位置他、いろいろな要素の条件詰めが重要です。新しい技術を導入しなくても、すべきことは山積みしているのです。

 またオーブントースターですから、メニューが「キラーコンテンツ」になります。これの決定はとても大変です。その中に厚切りパンに窪みを作りスープなどをいれる「ポットパン」「焼きいも」を入れています。つくづく便利さを感じたのは「焼きいも」。ホクホクに焼けますし、牛乳と合わせると、一食できてしまいます。普段は、焼きいもをそんなに食べないのですが、余りの美味しさに連続して食べてしまいました。確かによく考えられたメニューです。

コミニュケーションは密に

 そして商品のもう一つのポイントは「デザイン」です。デザイナーは、言葉より画で自分の心情を伝える方が楽な才能を持ったメンバーです。より共通イメージが重要になります。相互のイメージのすり合わせ、綿密なコミュニケーションがポイントです。コンセプト通りにできているか、いろいろな人が見てコメントすることが大事です。余程のことがない限り否定はダメです。あくまでもコメントです。

 同様なことは、製造ラインにも言えます。委託ラインでも、きちんとしたコミュニケーションは必要です。お互いに尊敬しながら仕事をする。そのためには自分が、良いものに関わっている言う自負が必要です。それを引き出すのもコミュニケーションです。

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