家電口論

2021年5月25日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

スマート家電グランプリ審査員。主催する『生活家電.com』を通じ、家電の新製品情報、使いこなし情報他を発信中。過去、某メーカーでAVメディアの商品企画を担当、オーディオ、光ディスクにも精通。また米・食味鑑定士の資格を有する。水、米、パン、珈琲、お茶の味に厳しい。

 2021年4月。コロナ禍。少し多くなったとは言え、まだほとんどのメーカーが対面の発表会を実施しない時期。シャープから発表会への案内状が来ました。そしてそこで見たテレビの新製品は私に、テレビがテレビと名のらない日への第一歩という印象を残しました。

「テレビ」という家電

 テレビ放送の進化は、「エンターティメント」に向けての進化です。まず黎明期テレビ局はどんどん番組を増やします。そして1964年の東京オリンピック。まさに当時の「超ド級のエンターテイメント」が、お茶の間で見られるとあって、爆発的な普及となります。そしてテレビは「カラー」「大型化」でエンターテイメント性を強めます。

 2000年代は、今の原型デジタル放送がはじまります。「新しい酒は新しい革袋へ」という言葉がありますが、ブラウンテレビ管から「平面テレビ」に主役は変わります。その時に、自家発光型のプラスマテレビ、バックライトを持つ液晶テレビの競争が起こります。競争は、汎用性に富む液晶の方が優位に進みます。

 そして2011年、そしてアナログ地上波は送信ストップ。デジタル放送のベーシックとも言えるハイジジョン放送、画素数を入れた呼び方をすると「2K放送」が日本ではじまりました。しかし、翌年2012年から、日本のテレビ事業部は、プラズマ、液晶問わず仲良く立ち行かなくなります。

 NHKは、止まることなく次の技術の開発を進めます。さらなる高解像度化「4K」「8K」です。人間の目の解像度は、8Kに足りませんので、8Kまで行くと、画素の切れ目がわかりません。8Kで技術的にはひと段落く訳です。高解像度技術、最後の華とも言えます。8K放送のターゲットは2020年東京オリンピック。地元開催に華を添える考えでした。

「8K」の開発を終えたシャープ

 2021年に延期された東京オリンピックですが、技術計画は止まりません。NHKはガンガン8K放送を増やしたいと言っています。「おいおい、何を言うのやら」と思いますね。NHKが受信料を元手に技術暴走しても、他の放送局は自前で稼がなければなりませんので、真似はできません。NHKも裸の王様に近くなっていることを気づくべきです。

 また、オリンピック延期で、NHKをサポートしてきたシャープも完全に8Kの商戦スタートを逃した感じです。世の中の最先端モノを使うことに興味がある人もそれなりにいますが、目玉コンテンツがなくと、やはり売れないでしょう。そして、今年は、基本お買い得モデルを出す年ですが、オリンピックの行方がわからない今、バンバン売れることはないでしょう。

 さて「8K」も一休みになった2021年、シャープがとった戦術は次の2手です。

8K液晶AQUOS

 1つは、液晶テレビのライバルとも言える有機ELテレビに、「AQUOS」ブランドを冠したこと。もう1つはリモコンに、ビデオ・オンデマンドのワンプッシュ・ボタンを大量に散りばめたことです。

 シャープのテレビのラインナップに、有機ELが加わったのは、2020年5月。AQUOSを冠しないでの追加ラインナップです。その理由は「AQUOSは液晶テレビ」というブランドイメージが非常に強いため、誤って有機ELテレビを購入してしまうことがないように配慮したためと言います。しかし2021年、AQUOSが冠されました。それはシャープが有機ELテレビもラインナップしていることが、認知されたからなのでしょうか?

「AQUOS」の力

 2004年だったと記憶します。あるマーケティング調査でインタビューした女性から、次のような言葉が出てきました。「AQUOSが一番好き。ケイタイも、クーラーも、電子レンジも全部AQUOSで統一したい!」「どこがいいのですか_」「ぜーんぶ!」

 ブランド全盛期にはママある話です。

 しかし、そうなるためにはブランドを認知してもらう必要があります。そのために、多く使われるのは「尖らせる」ことです。「××なら○○」と、唯一無二が一番多く使われる手法です。液晶テレビの旗手シャープは、当然「液晶テレビならAQUOS」。平面テレビの「平面」がデザイントレンドでもあった時代でもあり、グンとイメージを上げました。

 しかしイメージは、普遍ではありません。平面テレビも、2021年の今、トレンドと言うには当たり前すぎます。そして「8K」が出た今、液晶テレビの次のステージは確約されていません。また、8Kの有機EL開発は残っているでしょうが、コンテンツほとんどない今、焦って開発する理由は全くありません。

 後述しますが「テレビ」というカテゴリー自体弱っているところがあります。それなら、「液晶テレビ=AQUOS」と言う尖らせ方は捨てるべきでしょう。今回、AQUOSが冠されたことに、担当者は「なぜ、今?」という質問に「時がきたから」と答えましたが、8K液晶テレビも、もはや、尖っていないということではないでしょうか。

今後のテレビ技術

 さてディスプレイ技術を考える時、無視できないのは、アップル社の動きです。スマホのディスプレイですが、物凄い影響力があります。今、販売中のiPhoneには液晶画面もありますが、高性能機、そしてiPhone12以降は、全て有機ELとも言われています。

 しかし、有機ELは有機素材でできているため、寿命が短めという欠点があります。それを考慮してでしょうか? アップルは、マイクロLEDを考えていると言います。マイクロLEDというのは、1画素を描写するのに必要な光の3原色、赤、青、黄という3種類のLEDを1画素の面積内に配置して光らせる自家発光技術です。だからLEDは、スゴぶる小さい。マイクロと言われる所以です。光源がLEDですから、長寿命が期待できます。

 ディスプレイ技術は、次々新技術ができているのです。そこに残念ながら、液晶改良の文字はありません。8Kという高解像度を世界で初めて極めるのが、液晶の最高技術の様です。また新技術に、日本のメーカーはパーツを開発する形での参加しているレベルです。

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