World Energy Watch

2021年8月12日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学経営学部教授

住友商事地球環境部長等を経て現職。経済産業省地球温暖化対策技術普及等推進事業審査委員会、東京商工会議所エネルギー・環境委員会委員などを務めている。近著に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム)。

 8月1日には、英国スコットランド、エジンバラの北30キロメートルにあるモスモランのガス化学コンプレックスで抗議活動が行われた。英国シェル、米エクソン・モービルが持つプラントからの余剰ガス燃焼、騒音、振動が環境問題を引き起こしているとして、操業停止が要求された。

 天然ガスが温暖化対策上望ましくない燃料とされ、この先石炭と同様に生産設備への投資、融資がなくなるようであれば、将来供給に不安が生じることになる。天然ガス火力設備が電力供給の主体になっている国は、日本をはじめ世界には数多くあるが、燃料調達に影響があれば、停電する可能性もある。

天然ガス不足の心配は

 天然ガスの需給環境をガラッと変えたのは、米国で起きたシェール革命だった。08年頃から、それまで商業生産が困難だったシェール層中の天然ガスを、爆砕法により取り出すことが可能になった。結果、米国においては天然ガス生産量が急増し、ロシアを抜き世界一の生産国になった(図-2)。天然ガスを液化し輸出するプラントも相次いで建設され、輸出国にもなった。

 米国内の天然ガス価格も大きく下がる。シェール革命前まで天然ガス価格の地域による差は大きくなかったが、米国の天然ガス価格はアジア、欧州の価格を大きく下回るようになり(図-3)、炭鉱から離れた発電所では輸送費の高い石炭よりも競争力を持つようになった。

 天然ガス需要量は、1973年の第一次オイルショック以降、脱石油を図った先進国が石炭、原子力に加え、供給国が広がる天然ガス導入を図ったことから増加を続けていた。今世紀になってからはアジアの途上国と中東において需要が急増したことに加え、2000年代の北米でのシェールガス生産開始後は石炭から天然ガスへの需要の移動があり、さらに需要増は続いている(図-4)。

 コロナ禍は多くの国のエネルギー需要に大きな影響を与え、2020年天然ガス需要量も減少したものの、21年から需要量は順調に回復し20~24年の5年間で9%増(図-5)、供給量も増加すると予測されている(図-6)。クリーンな燃料として需要を順調に伸ばしている天然ガスだが、50年ネットゼロを世界の主要国が目指す中で、今後の需給については不透明感が出てきた。日本の発電量の37%(19年度)をまかなっているLNG火力の燃料供給に大きな影響があれば、停電を招きかねない。

 日本にとって重要なことは、天然ガスを取り巻く環境の変化が世界のLNG需給にどのような影響を与えるかだ。中国に今年抜かれるとみられているが、日本は世界一のLNG輸入国だ。環境NGO、金融機関の圧力によりLNG輸出設備の建設が中止されれば、手当ができなくなる、あるいは価格が上昇する可能性があり、たちまち電力供給と価格に影響を与える。逆に、ネットゼロを目指す動きが広まり利用者の天然ガス離れが急速に進むと、需給が急速に緩む可能性もある。

 19年、世界ではLNG輸出基地の建設事業の決定が相次いだ。総投資決定額は650億ドル、7兆円を超え、取扱量は950億立方メートルに達した。その直後から新型コロナの影響により新規投資案件は激減し、20年には40億立法メートルの1事業のみしか投資の決定は行われなかった。しかし、需要回復が見られることから、国際エネルギー機関(IEA)は21年から新LNG輸出基地への事業投資が回復し、24年までに毎年240億ドルが投資されると予測している。

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