World Energy Watch

2021年3月13日

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(Brankospejs/gettyimages)

 2月中旬米国が寒波に来襲された際、テキサス州では卸電力価格が通常の数百倍に上昇したことから、卸価格連動型小売料金を選択していた消費者の電気料金が1週間100万円になった(『なぜテキサス州の家庭では1週間の電気料金が100万円になるのか? テキサス州の電力自由化市場の問題を考える』)。代表的な家庭では1週間の電気料金が通常の4年分以上に相当する金額になったわけだ。電力価格高騰は誰の責任なのか、州関係者の間では責任の押し付け合いもあったが、市場設計にも欠陥があった。

 卸価格に連動しない固定された電気料金体系を選択していた消費者も、これから小売り事業者が負担した上昇分を請求される可能性が高い。卸電力を購入していたため巨額の請求を受けたテキサス州最大の電力協同組合は、組合員でもある消費者に電気料金高騰の付けを回すことを避けるため日本の会社更生法に相当するチャプター11を申請した。巨額の卸料金の支払いを迫られる小売事業者の中から追従する動きもあるかもしれない。

 卸価格の上昇による影響を分析した州公共事業委員会(PUC)の監視機関によると、PUCは行うべきでなかった卸価格の上昇を指示し、これにより電力小売事業者が支払う金額は160億ドル(1.8兆円)増えたとされている。この金額の減免をPUCが検討したが、減免を行わないことになった。州副知事は減免をすべきと主張しているので、まだ不透明だが最終的に消費者が全額を負担する可能性がありそうだ。仮に減免が認められても、その額は全体の3分の1程度であり、一部消費者はたちまち数十万円の電気料金を支払うことになる。

停電の責任は誰にあるのか

 2月15日停電発生直後、テキサス州アボット知事は「テキサス州の系統運用を行っているテキサス電気信頼性評議会₋ERCOTと発電事業者が寒波に備えた十分な準備を行っていなかった」と不満を述べていたが、2月26日州議会の委員会にておいてERCOT理事長が5時間にわたり質問を受け続けることになった。

 委員会では、「最大電力需要を少なく、利用可能な設備量を過大に見積もっていたのではないか。寒波に対する備えができていなかったのはなぜか」などの質問が出たが、理事長は、「PUCの指示通りに運営している。ERCOTは発電設備を補強させる権限を持っていない」と答えたた。

 PUCの委員長も、26日、27日、議会の委員会の公聴会に出席したが、火だるまになった。PUC委員長は、「PUCは発電事業者に対し寒波に備えるように指示する権限を州議会から与えられていない」と答弁し、議員から「権限があることは法にも明記されており、PUCの目的に明確に書かれている」と指摘され、共和、民主両党議員の間でPUC委員長の辞任を求める書簡が作成される事態になった。

 3月1日州副知事が、「PUC、ERCOTは最悪の事態に備えていなかった上、災害発生時のコミュニケーションにも問題がある。両組織の責任者に改革を任せることはできない」と述べPUC委員長とERCOT理事長の辞任を要求した。PUC委員長は即日辞任し、ERCOT理事長は3月3日に既に7人の理事が辞任していた理事会により解任された。理事長の年間報酬80万ドルの返還を求める声もあがった。

 州の電力市場とPUCの監視を行っている第3者の監視機関は、PUCとERCOTは2月16日から4日間にわたり卸電力価格を上限値の1kWh当たり9ドルに設定したが、4日間の後半32時間は設定する必要がなく、卸価格を不用意に引き上げてしまった可能性があると指摘し、その影響額を160億ドルと計算。小売事業者、消費者に返還することが望ましいとした。新委員長を迎えたPUCは、返還を行なえば予期しない影響を生じる可能性があるとして、3月5日返還しないことを決定した。

 8日に州副知事は返還すべきと発表したが、その原資はどこから出るのかなど明確でない点があり、まだどうなるか分からない。8日PUCの3人の委員のうち1人が委員長に続き辞任した。

 テキサス州の85%を占める自由化されている地区に住んでいる消費者は、卸価格上昇分を回収する必要がある小売り事業者により、これから電気料金の大幅上昇に直面することになりそうだ。自由化されていない残り15%に住んでいる消費者も天然ガス価格の高騰があったため、今後規制料金の値上がりに直面するだろう。

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