2024年4月24日(水)

World Energy Watch

2021年3月13日

なぜ対策は取られないのか

 2011年の寒波による輪番停電後、14年、18年と寒波に襲われながらテキサス州の発電設備では寒波に備え対策が取られることは、あまりなかった。自由化された市場では発電事業者は費用対効果を考えるので、数年に一度冬場に発電できなくなり失う収入と、対策費とそれにより得られる収入を比較し投資するか否か決めることになるからだろう。

 供給が少なくなり卸市場価格が高騰すれば対策費用を回収可能と考え投資に踏み切りそうだが、実際には対策費用を回収可能か判断することは難しい。テキサス州の発電量の半分を賄う天然ガス火力では寒波来襲時には燃料の天然ガスも高騰するので、コストが大きく上昇する。最大の問題は冬場に卸電気料金がどこまで上昇するか不透明なことだ。対策のための投資をせず収入を失うことを選択する事業者も多くなる。

 電力卸市場に任せたのでは、設備に関する対策が必ず取られるとは限らないので設備量の取引が行われる容量市場が用意される。発電の要請があった際には、必ず発電することが求められるので、容量市場に参加している事業者は寒波に備えた対策を取っている。例えば、天然ガスの供給が削減される可能性に備え、緊急時には石油も使用可能な設備にし、石油を発電所に備蓄するなどの対策だ。対策を怠り発電ができないと多額の罰金が要求される。

 容量市場がある中西部から東部13州にまたがる米国最大の電力市場、PJMとERCOTの2月寒波来襲時の様々な指標は表の通りだ。PJMでは電力需要の伸び悩みもあり予備力が大きい傾向にあるので、容量市場の差だけとは言えないが、ERCOTが電力価格において大きな影響を受けているのは明らかだ。


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