卸価格上昇の背景は
ブラゾスによる寒波来襲時の電力供給状況の説明は以下だ。
- 2月12日天然ガス不足を予測する動きがあり、ガス価格はそれまでの百万BTU当たり3ドルから150ドルに高騰した。13日から14日かけ寒波によりテキサス州の冬季最大電力需要は2018年の記録を320万kW上回る、6900万kWに達した。15日午前1時25分、ERCOTは発電設備の予備力の状況に応じ3段階に分けられている緊急警報を最大レベルに引き上げ、全域の停電を防止するため輪番停電を開始した。
- 15日午前5時15分、サウス・テキサス・プロジェクト原発の2基のうち1基が脱落したことから周波数低下が引き起こされ、ブラゾスが保有する石炭火力を含めいくつかの火力発電所が脱落、同時に天然ガス供給が不足し多くの天然ガス火力が脱落、さらに風力発電設備が凍り付き脱落。ERCOTによると4600万kWの天然ガス、石炭、風力発電設備が利用不可能になり、停電はさらに拡大した。
- 2月16日PUCはERCOTに対し卸価格を1kWh当たり9ドルに設定するように指示。この措置は19日午前9時まで続いた。2020年10月から21年1月までの卸価格は2.1セントから2.9セント、20年8月の熱波来襲時のピーク24時間価格は12.9セントだった。寒波来襲時1週間の卸価格の請求総額は550億ドル(約6兆円)となり、通常の電気料金の4年分以上に相当する。
14年の寒波来襲時には、北東部の天然ガス火力では天然ガス供給量が不足し、また石炭火力では石炭が凍り付いたため利用できなくなる設備がでたが、零下20度を超える地域を含め原発は1基も脱落せず寒波に強いとされていた。しかし、今回は冷却水の凍結による原発の脱落が他の発電所脱落の引き金になったようだ。
3月3日時点で、ERCOTからの卸料金支払い要求に応じていない小売事業者が12社、自治体が経営する電力会社が2社あり、未払い額は合計22億ドルと報道されている。チャプター11申請に踏み切る企業がさらに現れるかもしれない。1週間の電気料金が4年分に相当するほどの高騰を引き起こすことが許される市場はありえるのだろうか。テキサス州は、事業者の倒産を引き起こした自由化市場を今後どう運営するのだろうか。
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