新型コロナウイルス禍でワクチン接種が進み、英国内の経済活動が再開される中で、過激な環境NGOも活動再開を打ち出し、ロンドン市内で混乱を引き起こすと宣言している。自己隔離を前提に今月から来月に掛け渡英予定の方はロンドン市内の交通混乱に気を付けた方が良いようだ。
英国を本拠とする環境NGO「絶滅への反逆」は、「充分な温暖化対策が取られておらず、世界は絶滅の危機にある」と主張し、過激な行動を取ることで知られているが、8月23日からロンドンにおいて行動を開始すると宣言している。今までも何度かロンドンを中心に抗議活動を行い各地で混乱を引き起こしているが、今回も8月23日午前10時にロンドン中心部トラファルガー広場に集まることを呼び掛けている。
スローガンは「すべての化石燃料関連投資を直ちに止めろ」であり、2週間の休暇を取って参加するようにと呼びかけているので、混乱は2週間続くかもしれない。
今年11月に英国グラスゴーで開催予定の第26回気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に先立ち、コロナ禍で活動を控えていた温暖化問題に係わる活動家の動きが活発になってきた。彼らの目標は反石炭から反天然ガスにシフトしてきているが、化石燃料の供給に問題が生じれば、やがて日本は停電のリスクを抱えることになる。
環境活動家からの風当たりが強くなる天然ガス
スウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさん(『16歳の少女はノーベル平和賞に相応しいのか?』)による学校ストライキを契機に始まった運動「未来のための金曜日」も、国連総会期間中の9月24日「環境正義の実現」に国際的な学校ストライキを呼び掛けている。いま、環境NGOの主張の主眼は天然ガス生産・利用禁止に置かれ始めた。
今まで二酸化炭素(CO2)排出量が相対的に多い石炭および石炭火力発電所が温暖化を引き起こすとして槍玉にあげられていたが、石炭よりは排出量が少ないとは言え、天然ガスも燃焼に伴いCO2を排出するとして目の敵にされるようになってきた。
天然ガスは、石炭、石油よりもCO2排出量が少なく(図-1)、ついこの前までは温暖化対策の切り札として期待されていたが、世界の主要国が2050年温室効果ガス純排出量ゼロ(ネットゼロ)を宣言する中で、その役割が見直されている。温室効果ガスの大半を占めるCO2排出をゼロにするならば、天然ガスの利用も制限されることになるからだ。国際金融機関からも天然ガスの利用見直しの動きが出ている。
欧州投資銀行は、天然ガスを含め化石燃料関連事業への融資を21年末に停止することを決めており、同行総裁が記者会見の席上「天然ガスは終わった」と発言した。アジア開発銀行も、炭鉱、石炭火力、天然ガス・石油生産への融資中止を検討しており、関係国と協議の上、年内にも融資中止が理事会に諮られる予定と今年5月報道された。天然ガスへの風向きが変わる中で、温暖化問題の活動家は天然ガスのプラントを標的にし始めた。
7月31日、ドイツ・エルベ河河口の工業都市ブルンシュビュッテルに欧州各国から2000人が集まり、同地で建設予定の液化天然ガス(LNG)受け入れ設備建設中止を求め行進した。参加者は、デモの4日前から市内の公園にテント村を設置し、デモの前日にはテント村が満員になったと伝えられた。反対運動に参加した「未来のための金曜日」のメンバーは、天然ガスからは燃焼に伴うCO2に加え温暖化効果の高いメタンも漏洩するので、直ちに使用をやめるべきと主張した。