2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年9月17日

コロナで独裁主義の優位性が指摘されても

 民主主義の破壊も最初は民主的に選ばれた指導者が次第に独裁者化していくケースが多い。これは、民意を反映している面もある。選挙民にとって最も身近な問題は、治安であり日々の生活の維持であるので、そのためには強権的な措置が取られても許容でき、良質のガバナンスや改革といったことがプライオリティではない。

 従って、治安対策を最重要課題とするエルサルバドルのブケレも、その非民主的言動にも拘らず高い支持率を維持している。問題は、そういった指導者の自らの権力維持が自己目的化してしまい、ベネズエラやニカラグアのように、形だけの見せかけの民主主義になり実力で反対派を弾圧せざるを得なくなることである。

 昨今のパンデミックに対する対応が、独裁主義的傾向を強めている面もあり、パンデミックの克服や経済回復のために民主主義的体制と独裁主義的体制の何れが優れているか政治システム間の競争となっている。しかし、その判断基準に、治安や健康と生活維持の確保に加えて、国民の満足度、即ち自由な選択が許容されるかを加えるべきであろう。そうなれば、おのずから自由な民主主義体制が優れているということになるはずである。

 中米の問題は、自由な選択ができる前提としての治安や生活の維持が確保できない所にある。従ってこれらの国に対する治安面、パンデミック対策、生活維持に必要な社会的サービスの改善、経済対策といった点に支援の重点が置かれるべきであろう。汚職や腐敗の防止は、メキシコ、ペルー等のように、それを政治的な争点とすればある程度の自律的な改善が図れる場合もある。

 中国の影響力の拡大により、国連もこのままでは独裁的指導者の相互扶助組織になりかねない。米国としても国益や安全保障上の考慮により、民主主義だけを基準とするわけにもいかない。

 民主化が自国の利益につながるような政治的経済的な国際的システムを作って自律的に民主化に向かう動きを奨励するようなことができるとよい。民主化が進んだ国については民主化の配当としてなんらかの相当程度の経済的利益を享受できるような仕組みが必要なのではないだろうか。

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