2024年4月20日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2021年9月22日

社会管理の「自信」とともに萎縮する中国社会

 今や習は、新疆・香港や新型ウイルスへの対応で「成功」した社会管理の経験を生かし、中共と中国政府が国内のあらゆる側面をあるべき姿へと整える能力を手にしたと考えているのであろう。既に全ての中共党員は、日々スマホに送られてくる習近平思想学習漬けに従っており、その精神や手法をさらに学生や一般社会へと推し広げるものである。したがって、それはプロレタリア文革の再来ではない。

 過去数千年の中国の歴史では、儒家・法家エリートがどれだけ政治と社会を導こうとしても、技術や能力の不足ゆえに、全ての人々を秩序に従わせ、中国の文明・文化への自信を抱かせることは出来なかった。しかし今AI・ITと実力を以て人々の思想を「中国化」し、さらなる「発展」へと団結させ動員する条件が揃った。これこそ西側の海洋文明を相対化し、黄色い大地から生まれた中国の歴史と文明に対する責任を果たすことであり、言わば「真正の中国文化による大革命」である。

 今後の中国では、経済が突然崩壊しない限り大きな混乱が起こるとは思えないが、社会的なインフラが統治者の側に偏重し、人々の自由な空間が厳しく制約された北朝鮮に似た雰囲気が強まる可能性が高い。そして「外」との摩擦が増すごとに、「外」とつながるコンテンツや、社会の積極性を生み出さないコンテンツがますます干渉を受け、最後に残るのは愛国主義イデオロギーに忠実に沿ったコンテンツのみとなろう。習近平以下「中国の智慧」に自信を抱く人々はそれで満足するかも知れないが、本当に中国の個々人がそのような現実に幸せを感じるかどうかは別の問題である。

   
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