2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年10月5日

 米国などの加盟の後であれば、交渉を経て中国の加盟を認めることもできるだろう。またWTOの場合と同様に、ギリギリ中台の同時加盟とすることが出来る(WTOには、中国が2001年12月に僅かに先に加盟、直後の2002年1月に台湾が続いて加盟。ほぼ同時と言える)。

米国内を動かすことは不可能ではない

 今や中国が申請したので、台湾もTPP参加申請を出さないわけにはいかなくなり、また、申請を出しやすくなったと思われる。実際、中国の加盟申請からほどなくして9月22日には台湾がTPPへの参加を申請した。TPPを守るために加盟国の間で基本的考えを共有しておくことが重要だ。

 日本は米国に対する影響力を行使すべきだ。米国のTPP復帰は、インド太平洋でのプレゼンス維持など大戦略の上からも避けて通れない。バイデンは慎重姿勢を崩しておらず、中国の加盟申請に関連した質問に対するサキ(ホワイトハウス報道官)の返答も慎重である。

 しかし、米国内を動かすことは簡単ではないとしても、不可能ではないのではないか。サキは「貿易は唯一の選択肢ではない」と言うが、これをしないと米国のインド太平洋戦略はじり貧になると言っても過言でない。米国内でもカトラー(元通商代表部代表補)ら、貿易専門家が加盟の必要性と可能性を説いている。

 また、TPPを対中競争文脈の中にきちっと位置付ければ超党派の支持を拡大できるのではないか。バイデンには来年の中間選挙後には、時間を失うことなく、大胆に動くことが期待される。労働、環境などは、米墨加のUSMCA協定の規定をTPPにも使うなど技術的工夫は考えうるように思われる。

   
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