7月17日付の英Economist 誌は、「バイデンの新しい中国ドクトリン。その保護主義と、米国か中国かの選択をせまるレトリックは、米国を害し同盟国を遠ざける」との社説を掲載している。
長い間、米国の楽観主義者たちは、世界経済に中国を歓迎することは、中国を「責任ある利害関係者」にし、中国に民主化をもたらすと考えてきた。しかし、現実は、その期待を裏切った。トランプ政権において、既に米中対立は、貿易や技術を通じて始まっていたが、バイデン政権は、米中対立を、民主主義対独裁主義という政治システムないしイデオロギーの闘争にしている。これを、エコノミスト誌は、「トランプとバイデンはニクソン訪中後の50年で最も劇的な対中外交の転換をもたらしている」と位置付ける。そして、その基本方針を是認しながらも、詳細には幾つか問題があると指摘する。
エコノミスト誌の社説は、バイデン政権の対中政策に関連して、主として労働組合に配慮するバイデン政権の貿易に関する保護主義を批判したものであり、適切な論を展開している。貿易面で保護主義を実施しながら、米中対立で米国の側に立つように同盟国や新興アジア諸国を説得していくのは難しいのではないかとのこの社説の論旨をバイデン政権はよく考えてみるべきであろう。
オバマ政権が締結し、アジアにおける貿易の自由化その他に大きな影響を与えるはずであったTPP(環太平洋パートナーシップ) をトランプは拒絶してしまったが、日本が努力して部分的に環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)として復活させた。今やこれに英国も加入の道を探っている。これには台湾も経済地域として条文上参加できることになっており、それが実現すれば、台湾の国際的地位の向上や経済面での良い効果が見込まれる。米中対立の中で、台湾は米ソ冷戦時代のベルリンに似たような重要性を持っているのであるから、バイデン政権はこの問題をもっと真剣に検討すべきであると思われる。
バイデン政権の対中政策には中国の国際法を無視した行動を看過すべきではないと考えるので、全体として賛成であるが、エコノミスト誌の社説が言うように詳細なところで効果的ではないところがある。信頼されている同盟国として、日本も、米国には率直な意見を述べていくことが望ましいと思われる。
中国の台頭は、少子化、高齢化の人口上の問題、水の枯渇や大気の汚染などの環境問題があり、これまでのように順調にいくとは思えない。対外的には習近平は早々と鄧小平の「能ある鷹は爪を隠す」政策を放棄し、国際的に対外強硬路線を打ち出しているが、結局のところ、自ら中国を取り巻く国際環境を悪くしているようである。
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