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2021年1月20日

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渡部恒雄 (わたなべ・つねお)

笹川平和財団上席研究員

1963年生まれ。東北大学歯学部卒。95年米ニュースクール大学政治学修士。同年米戦略国際問題研究所(CSIS)に入所、上級研究員等を歴任。三井物産戦略研究所、東京財団を経て2017年より現職。近著に『2021年以後の世界秩序』(新潮新書)。

2015年に習近平国家主席が訪米した際、副大統領として出迎えたバイデン新大統領   (AP/AFLO)

 1月、アメリカではバイデン新政権がスタートする。まずは史上最高の8100万票超を獲得したバイデン氏に民主的価値を共有する同盟国として祝意を表したい。

 一方で、敗れたとはいえ、トランプ前大統領も約7400万票という史上2番目の票を獲得した。分断したアメリカを抱えたバイデン新大統領の政策運営は難しく、コロナ対策、経済という国内優先の政策が想定される。ただしバイデン氏が掲げる国際主義および同盟国重視の姿勢、そして厳しい対中認識は日本としては歓迎し共有すべきものだ。国内に難題を抱えるバイデン新政権の米中認識と戦略を概観し、日本の存立・繁栄のための外交・安全保障戦略の方向性を提言する。

トランプ、バイデン両政権で
「共有」する対中認識

 今後の国際秩序の行方を考える上で、最重要の要素が米中関係であるという点に異論はないだろう。

 トランプ前政権は、17年の国家安全保障戦略文書以後、中国を「既存の国際秩序に挑戦する修正主義勢力(リビジョニスト)」と定義してきた。ポンペオ国務長官(当時)は、20年7月にニクソン記念図書館で行った演説で、1972年のニクソン訪中以来の関与政策(エンゲージメント)は失敗したと結論付けた。

 関与政策とは、冷戦期の「封じ込め」に代わり、中国の経済発展を容認し、対中経済関係を深めて国際社会に取り込めば、国際ルールや民主的な価値観を中国が尊重するようになること、長期的には中国の政治体制の変化も期待するという政策である。

 この点で、バイデン政権の外交・安全保障政策の中枢となる次期国家安全保障担当補佐官に就任予定のジェイク・サリバン元副大統領補佐官(国家安全保障担当)は、これまでのアメリカの対中関与政策が失敗したという点と、中国に対する脅威認識の点で、トランプ政権と大きく変わらない。

 米フォーリンアフェアーズ誌への2019年の寄稿(カート・キャンベル元東アジア太平洋担当国務次官補との共同執筆)では、アメリカのこれまでの関与政策が失敗したと指摘している。サリバン氏らは、これまでの関与政策の基本的な間違いは、それを通じて、中国の政治システム、経済、外交政策に根本的な変化をもたらせると思い込んでいたことだとも述べている。

 しかしバイデン政権の対中政策はトランプ政権の延長ではないだろう。トランプ政権は、アメリカファーストのスローガンで国際協調を軽視したが、バイデン政権は国際協調、とりわけ同盟国との協力を強く打ち出している。

 また民主党内には、中国と軍拡競争を行うことによる軍事費増額を嫌い、医療や福祉のための予算を確保したい左派の存在がある。この勢力は、サリバン次期大統領補佐官やアントニー・ブリンケン次期国務長官らを警戒し、サリバン氏らと対中脅威認識を共有するミシェル・フローノイ元国防次官(政策担当)の国防長官起用に難色を示し、バイデン氏は妥協策としてフロイド・オースティン元中央軍司令官を指名した。

  民主党左派への「妥協」で指名されたオースティン新国防長官   (AP/AFLO)

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